ナチュログ管理画面 釣り 釣り その他 アウトドア&フィッシングナチュラムアウトドア用品お買い得情報

スポンサーリンク



上記のお知らせは30日以上更新のないブログに表示しています。
記事を更新するとこのお知らせは表示されなくなります
  
Posted by naturum at

2016年05月06日

魚命救助


撮影中に遠くで人垣ができているのが見えた。
細いスピニングロッドが曲がっている。
水面が叩かれ飛沫が上がっている。
暴れ方がコイではなさそうだったので駆け付けると、
案の定カムルチー。
ランディングができそうになくラインを切ると言い出したので
僕は開口一番、その魚もらえませんか。
構わないとのことで急いでランディング態勢。
ワームが飲まれておりラインも約2号。
いつ切れるやも知れず、
地面に寝ころび上半身を水面に乗り出すと、
野次馬が歯が鋭いからなんだの、
ライギョは危ないから糸を切れだのと。我慢我慢。
素早くカムルチーを掴んで草むらに上げた。
次に飲まれたフックを外そうと素手で口を開けていると、
また野次馬がライギョは歯が鋭いから危ないだの
なんだのかんだのと。
野次馬がカムルチーのなにを知っているというのか。
カムルチーを知らないから誤解しているのであって、
カムルチーを知っているから素手で口を開けるくらいなんでもない。
野次馬を相手にする時間がもったいないので口を結んで集中。
フックを外すとどよめく野次馬。
釣人が撮影をしたいとのことで、
カムルチーの持ち方を教えたがキモチワルイから持ちたくないとのこと。
そんなキモチワルイ魚を狙って釣る神経が理解できないが
ここでも我慢我慢。
するとおもむろにプライヤーで下あごを掴んでぶら下げた。
当然、重くて滑り落ちる。嫌な音を立てて舗装路に落ちる。
目を覆いたくなるが、釣った魚は釣人のもの。文句は言えない。
魚をもらえるだけありがたい。
ここで「殺せ殺せ」との声が聞こえてきた。
子供の頃、蛇を見つけると殺す阿呆を何人も見てきた。
阿呆以外の適当な言葉が見つからない。
なぜ殺さなければならないのか。
それを見て僕のように疑問に思えばいいが、
殺すことが正義だと思い込む子供だっていた。
ここで議論し論破したところで怒りの矛先は
またカムルチーに向けられるだろう。
歯を食いしばって我慢した。
撮影を待ってから礼を言いカムルチーを片手にその場からすぐさま離れた。
水汲みバッカンを取りに戻る。
人目につかない所、
血の匂いでミシシッピアカミミガメが寄ってくるかもしれず、
そのような危険に晒されない所、
ミサゴに見つかりにくい所、
すなわち物陰で魚体を休められる所、駆除網が入らないだろう所。
それら要素が揃った所を探して水に帰した。
一刻も早く水に帰すのが最善とわかりつつ
数秒だけ我慢してくれと直前で撮影。
惨状を目の前にしても戦場カメラマンは撮る。そして写真で伝える。
カムルチーは都市開発により生息場所を奪われ、
一般人からは危険な魚だと誤解され、
釣人からキモチワルイと言って殺される。
カムルチーの環境は悪化の一途を辿る。
カムルチーは嫌がるように泳ぎ去った。
見送ったあと、ようやく落ち着いた。
すると、結んでいた口の中がやけに気持ち悪い。
吐くとそれは赤に染まっていた。
※カムルチーは特定外来生物ではなく、
我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある
外来生物ではないと判断されている。
荒俣宏著の世界大博物図鑑2魚類には文化1年(1804)に渡来したとあり、
もちろん明治元年(1868年)以前のことである。


  

Posted by Миру Україні at 07:07救出