2021年05月07日
見つけた!!森を彷徨った結果がこちら!しかも・・・

オオルリ雄
春から夏にかけて、
夏鳥と呼ばれる渡り鳥が都市部に少数やってくる。
いままでそんなことを知らなかったのだけど、
知ってしまうとさあ大変。
毎日気になり探鳥したくて仕方なくなる。
というわけで欲求を満たすべく探鳥ライフ。
そんな気もそぞろになる理由というのは、
普段見られない野鳥達が南方から順次お越しになるからである。
季節ものであり僅かな期間なので、
この好機を逃すわけにはいかない。
弁当をバッグに忍ばせ朝から小雨降る森に入り、
耳を澄ませ樹上を広く見渡しながら彷徨う。
オオルリは高い所にいるはずだ。
数年前、藤の花を見に行った場所で
オオルリの囀りを沢山聞いたとき、それらが全部樹上であり、
望遠レンズもなかったので姿を確認できないという悔しい目に合ったのだ。
それにしても広い森で一羽の小鳥を探すなんて
途方もないなと感じながら、
視界の中に動く物があればレンズを向けて確認。
なにか動いた!
・・・・・・なるほどスズメですか。
こっちでも動いた!
レンズを向けるとシジュウカラ。
これらはお馴染みの野鳥達。
すると影が走る!
しかし生い茂る葉の向こうで姿が確認できない・・・・・・。
動き回る影を追うも、すぐに見失う。
オオルリだったかもしれないし、スズメの可能性も否めない。
いつ本命と出会うかしれない緊張感。
これは次の一投でアカメが喰ってくるかもしれないのと同じこと。
本命はオオルリだけど、まだ見ぬキビタキにも会いたいし、
さらに幻級のサンコウチョウだって。
樹上ではなく、地面に目をやればもしかすると
コルリやコマドリにも会えるかもしれない。
トップで本命を釣りたいけど、
ボトムを引いたら違う大物が釣れるのになー、
両方は無理やねんなーという葛藤と同じだ。
見たことのない野鳥に出会う期待感を原動力に再び森の落葉を踏む。
たまに森から出ては、外から森を眺めてみるも手掛かりなし。
数時間経過したところで、森の奥に人だかりを発見。
二十人ほどいるだろうか。皆がレンズや双眼鏡を上に向けていた。
これはオオルリに違いない・・・・・・ぷ、ククク笑いが漏れる。
勝利を確信したのだ。
オオルリではない。
その群衆の中に鳥友の姿があったからだ。
よし、今回は勝った。僕が先に鳥友を狙撃する。
会う約束もしていない鳥友との遭遇時に、
お互い狙撃するのが恒例となっている。
自分の真剣な姿を隠し撮りされ、
後にそんな画像を一言コメント付きで
スマホに送り付けられた時の恥ずかしさといったらない。
ちなみに僕がやられた時に返信する文章はだいたい決まっている。
『二百万円もする機材で撮影していただき誠に光栄であります』
カメラ 七十万
レンズ 百四十万
レンズフィルター&レンズコート数万
三脚・雲台 二十万
メモリー 数万
その他諸々。
オオルリ撮影さておき、
太い幹の陰から鳥友を長距離狙撃する。
野郎が構図に入るとレンズがカビるので、
鳥友だけに狙いをつけ、よく育ったお胸、いや、
おし・・・・・・いや、お顔に照準を合わせてシャッターボタンを押した。
やけに真顔の鳥友の狙撃画像を確認してちょっと笑いながら、
幹から幹へと姿を隠しながら距離を縮めて接近し、
静かに背後についた。
オオルリに夢中になってまだ気づいていない。もらった。
ソッと声を掛ける。
ドバトでも撮影しているのですか?
鳥友はすこし驚いた素振りを見せたが、
オオルリを撮ったことがないくせに早く撮らないと、
なにをのんびりしているのと急かされた。
いやいや、もうココに辿り着いたのだからと、
僕は大船に乗ったつもりでいた。
ではありがたく初物を撮らせていただきますかと、
皆がレンズを向ける方に目をやると・・・・・・なにも見えない。
わからない。どこにいるの?焦る。
皆様の高速シャッター音だけが響き渡る。
焦る焦る。
レンズを向けられない自分が恥ずかしい・・・・・・。
もう一度周囲のレンズの角度を参考に目をやるも、
オオルリの姿が確認できず苦笑い。
焦る焦る焦る!
そうこうしているとオオルリがどこかへ移動したらしく、
周囲の張り詰めた緊張もどこかへ消え、皆が散らばった。
参った。うな垂れる。
ここまでたどり着いたのにオオルリを見られないなんて。
しばらくして沢山の目を持つバーダー達が違う方へ集まりだした。
きっとそこにオオルリが移動したのだろう。
それを横目に僕と鳥友は一息入れて談笑する。
いつ来たの?なにか撮れた?etc...
そんな最中だった。
鳥友の視線が僕の後ろに行ったと思えば、
小さく声を発した。
「あっちにオオルリ」
沢山のバーダーとは反対の方向へ急いだ。
しかし凄いな。
話をしている時に小さな影を見つけるなんて。
きっと人の話を聞いてないな。
鳥友の後を追い、鳥友が三脚を置いてカメラを構えた。
その方角を確認すると、やっと僕にも小さな影を見つけられた。
枝から枝へと昆虫を捕食しながら動き回る影を見失わないよう、
粘り強く目で追跡する。
あぁ、葉の裏に入って撮れない!
枝が被ってピントがもっていかれる!
難しい!
ようやく全てがクリアした瞬間が訪れた。
ロックオン。
ピント優先設定のフォーカスが合った瞬間に連写開始。
よし、よし、よし!撮ったぞオオルリ!
声には出せないが、心で大きく叫ぶ。
オオルリは枝から枝へ、木から木へと、
あちこちへ移動するが慌てて追いかけてはいけない。
絶対に見失うものかと目だけで追う。
葉の裏に入って見失ったように思えても、
そこから影が飛び出していなければ、きっとそこにいる。
もしかするといないかもしれないが、
自分の感覚を信じて我慢の時。
しばらくすると小さな影が飛び出した。
やっぱりいた!
オオルリが捕食に夢中になっている間に
距離を縮めて三脚を構え、レンズにオオルリを入れる。
これを延々繰り返す。
ふと鳥友の姿がないことに気付いた。
きっと向こうもそう思っていた。
気付くとお互い違う方向にレンズを向けている。
『二羽いるね!』と目で合図。

オオルリ雌(たぶん)
まさかの雌とも出会えた。これは喜び倍増。
この広い森で確認できたのは、オオルリ雄が二羽と雌が一羽。
野鳥ビギナーには難度が高すぎたが、なんという好運。
ただし、良い日に当たれば石を投げればなんとやらで、
バッテリー&メモリーが足りなくなり、
嬉しい悲鳴を上げるほど出会えるそうだ。
気付けば雨脚が強くなってきた。
レンズを上方へ向けられないほどになってきたのを機に
二人で森から撤収した。
カワセミ・ルリビタキ・オオルリの、
三大幸せの青い鳥シリーズをこれにてコンプリート。
と、おもいきや、コルリも綺麗な青い鳥だ。
青い鳥四天王を目指して、次なる狙いはコルリ。
あぁでもサンコウチョウも、
青くないけどコマドリも、あれもこれも!
こんな夏鳥祭りもあと半月で終わる。
静かな森でアツい夏鳥探鳥は続く。