純屋

昔ながらの鱸釣師が書くブログ記事に
クロダイ釣行があり、感情を誘発されてしまう。
スピッティンワイアはキチヌにもごっつええし、
クロダイも好きなんやあと目を細め、
翌日の天気予報を確認すると、
風向きええんちゃうん？知らんけど。
まあとにかく行くでー！
と気合い満タンやったのに、
ちょっと空模様がよろしくなく断念。
あぁ自分はいつから軟弱になったのか。
しゃあない、第二プラン実行や！
と気炎をあげるものの、これまた中止。
さて行き場を失った気持ちの昂りをどうしてくれよう。
時間潰しにある場所へ向かう。
そこでは女性に接客されご機嫌さん。
魚釣りなんて行かんで良かったとさえ感じていた。
お会計まで仲良く一緒に行き、
笑顔で伝えられた数字に二度聞きしそうになり、
恐る恐るレジに表示された金額に視線を移すと、僕は凍りついた。
百戦錬磨のこの僕を・・・・・・やりよる、この女。
君の接客最高やったよと笑顔を残し、雨降る街に姿を消した。
さっそく買ったばかりの、
有名ブランドの高価な上下のカッパ、いや、
レインウェアを身に着け、僕はキチヌ釣りへ出掛けた。
レインウェアの下なんてウエストハイの
ウェーダーで問題なく、これまでそうしてきたし、不満もなかった。
なので透湿防水パンツなど買うつもりなんて
これっぽっちもなかったのに時すでに遅し。
さらに「これもすごく良いんですよ」と、
天使の笑顔で手渡されたゴアテックスのハット。
これまでもこれからも絶対不要なはずで、
やはりコレは部屋に置いてきた。高いから濡れて汚れたらイヤやん。

これまでの経験から、いつもそこにはおらず、
ある条件が揃えば捕食者が寄ってくる場所がある。
いわゆる索餌回遊的な行動だと考える。
これ即ち、
時機さえ合っていれば誰が投げても釣れるということになり、
案の定、すぐに喰ってきた。
だって喰いに来てるねんもん。そら簡単やん。
久しぶりのキチヌは相変わらず美しい色彩を放っており、
本当はクロダイが釣りたい気分なのに、
キチヌの金属的な青の光沢に染まる鱗を見ると
惚れ惚れしてしまう。天然色は素晴らしい。
しばらくこの場所へ来てなかったけれど、
後に下げ止まりに底の地形を確認すると大きな変化もなく、
潮流における魚の定位置もいつもと同じらしく、
狙った位置で喰ってきた。
『釣れて不思議なし』は新鮮味に欠けるが、
ここまで到達するのに何年も足繁く通い観察しているわけで、
ある種、知恵の悲しみという言葉が当てはまるかもしれない。
一尾釣れてくれて満足だったが、
ちょいと試したいことがあったので二尾目も狙ってみる。
潮流に乗せてプラグを漂わす、といえば格好良い表現だが、
足元に泳いできた亀を眺めつつリールを巻く手をしばらく休め、
次に巻き始めたときに、なんかゴンゴン引っ張られて
ロッドが思いっきり曲がってるんですけど。
まさに釣れちゃった！状態。
これぞ誰でも釣れる状況たる所以。
よしよし、めっちゃ引きよる。
ドラグが鳴りまくり、
断続的に引き込む鯛系の突っ込みが面白い。
強く引かれた瞬間、
急にロッドを前に倒してラインテンションを抜いてみる。
するとキチヌは泳ぐのをやめた。
こんな簡単に止まるのかと驚いた。
もう一度同じことを繰り返してみると、
やはり同様の行動を見せた。
どんな魚にも通用するかはわからないけれど、
ひとつ引き出しが増えた。
ラインを全部引き出さんとする魚と対峙する機会に恵まれたら、
この技を仕掛けてみようと頷いた。
エックス・デーはそう遠い将来ではなく、
今から心の準備をせねばならない。
バレるかもしれない。いや、必ずバレるだろう。
カードの明細が奥さんの目に触れたとき、
僕は引き出しの中からベストの答えを導きだせるだろうか。

Rod : Rawdealer R703RR-S The Flicker By Fire
Reel :07 LUVIAS 2500R
Line : YGK G-soul Upgrade X8 1.2G
Leader : サンライン システムショックリーダー ナイロン25ポンド
Knot : FGノット
Lure : JM6 M.E.B