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2018年11月12日

日中 川 水面 平鱸

日中 川 水面 平鱸

遠くで大きなボラが水面を飛び出し落水した音が耳に届いた。
うつらうつらしていた視界の隅で水柱が上がったのも見た。
午前10時だというのに夏日といえる気温。
陽射しを浴び気怠い僕はよそ見から、
偏光グラス越しにルアーに焦点を合わせた。
ルアーの後ろでごっついボラが跳ねたなあと漠然と感じ、
あんなのにフックが引っ掛かかろうものなら往生するところだった。
刹那だったはずなのに、やけに時間が緩く流れるように感じたのは
季節外れの暑さのせいだったに違いない。
現実の時間に正気を戻させたのは、
ボラが落水して僅かな時間でもう一度水面が炸裂したことだった。
山間に横たわる清流の水を横切るようにシンキングペンシルが
右、左と僅か二回ドッグウォークした時に、
白い魚体が水の底から勢いよく水面から飛び出し全身を露わにした。
だがロッドに衝撃が伝わらず、シンキングペンシルもまた
流れに揉まれて溺れているままだった。
迂闊だった。
直前のボラ・ジャンプと思っていたのは鱸の捕食だったらしい。
漫然とせずしっかりルアーを注視していたら・・・・・・
ルアーに強いドラッグを掛けず喰わせの動きにしていれば・・・・・・
しっかり喰っていたはず。これも結局は『たら・れば』。
それにしても大きな魚体だった。
居眠りをバケツの水を掛けられ叩き起こされるような目覚め方。
鱸はどこまで遡上しているのかを調査しながら
降り立った初めての川原で、
後から来た震えと興奮でその場に立ち尽くした。

まだルアーに触れていないはずなので喰う可能性はある。
トレースした。ルアーを何度も交換した。
投げる角度だって変えた。
しかし複雑な流れをした水面が再び炸裂することはなかった。
そのまま下流へ下り透明度の高い淵まで来て
水底を覗き込んでみると、雌雄と思われる綺麗なアマゴが
仲睦まじく揺らいでおり、それをしばらく観察できた。
流れに手を入れ水を掬って飲んでみると清流の味が体に沁みた。
他にもオイカワやウグイ、アユなども見られ美しい
川であることを感じた。

もう一度上流へと歩みを進め、瀬と瀬の間に出来ている、
いかにも捕食者が流れに定位し、
被食者をいつ襲わんかと待ち構えていそうな場所に狙いを定めた。
さきほどのように魚が居るのかどうか疑いながら、
しかも集中が欠如したまま投げてはいけない。
魚を釣りたいのだから狙いの場所に必ず魚が居ると想定し、
立ち位置を考え忍び足で
流れを横切り、ルアーを通すコース、喰わせる位置を決め、
一投目を慎重に選んだ。
ルアーはライヴワイア。いつも好む派手系ではなく、
控え目なカラーを持ってきていた。

落ち着いて。
僕と鱸の間には強い流れが左に走っている。
その流れを横切らせるようルアーを放った。
鱸が定位しているのは約8メートル先の左側下流。
そのずっと上流にライヴワイアは着水し、
続けてラインが流れの上に落ちるが、
穂先を高く持ち上げラインスラックを巻き取り、
ライヴワイアに強いドラッグが掛からないようアクションを開始。
緊張に包まれたまま、核心へと近づく。
左に流されながら演技していたライヴワイアが
僕の方へ引っ張られる角度になったとき、
強烈な白い水柱が立った。
絶対鱸は居ると信じていたし、
喰うと信じていたのに、
僕はその瞬間を真実かどうか認められずにいるほど驚いた。
現実に引き戻されるようにロッドが弧を描く。
考えるより先に体が反射的に対応していた。
重量を感じながら静かに追い合わせも入れ、
臨戦態勢から応戦へと移行した。

当然の如く相手は急流を利用し下流へ走ると想定していたが、
そんな様子はなく上流へ動くような気配を見せながら
その場で引っ張り合いになる。
すると一発目のエラ洗いがきた。
飛び出す魚体を抑えようもない強烈なエラ洗いを喰らう。
これには肝を冷やしたが、
ロッドを寝かせるように倒し、
ラインを弛ませることなく冷静に対処できた。
この時フックが完全に掛かっていることを確信。
しかし初めての場所に一抹の不安が過る。
倒木や廃棄されたカニカゴが沈んでいると厄介どころか
災難である。
まだ自分と鱸との間に急流という大きな壁もあるし、
一気に寄せようか・・・・・・。

けたたましい水音に包まれながらの鱸との駆け引き。
慌ててはいない。
絶対に逃してはならない相手が糸の先に居るが、
今この瞬間を噛みしめ楽しんでいる。そんな急流の乱。
ふと、第三者の視線を感じた。
上空にミサゴかトビでも旋回して、
僕の掛けた魚を横取りしてご馳走にありつこうとしているのか?
違う、あれ誰?
ご年配男性が、流れに突き刺さる僕に向かって叫んでいる。
でも水音で何を言いたいか聞き取れない。
え?なにー-?と顔を傾けそんな仕草を送ってみる。
遥か昔に永遠の夏休みを手に入れたお年寄りが、
大きく腕を動かし続け、ナニかをアピールしている。
こ、この緊急事態にどうしたというのですか。
鱸の相手をしながら暇を持て余した
爺さんの相手もするという器用さ。まさに二股。
笑顔を見せると爺さんが何度か頷いたように見えた。


鱸が急流の存在に気付いたか、水流を利用し疾走を始める。
サケやサクラマスのような速度感はないものの、
確実に僕との距離を広げていく。
タックルバランスからすればこれごとき抵抗に抗うことは出来たが、
口切れを恐れて鱸を走らせることにした。
ドラグ設定値を突破して出ていくライン。
数クリックだけドラグノブを左に回した。
慌てることはない。しばらく鱸の走りは止まりそうもない。
また爺さんの方を見て、
遠くの爺さんがする非言語コミュニケーションを読み取らんとし、
鱸の抵抗を受け止めながら、
右手で爺さんに手を振って余裕を見せたら、
また何度か頷いた。
良好なコミュニケーションが確立したことを思わせた。

爺さんが身振り手振りで暗号を送ってくる。
僕は解読と鱸との引っ張り合いに忙しい。

なになに?
ははーんなるほどそゆことか。
その鱸と?
俺っとこのババアを交換してくんねーか?
またムチャなことを言う。
ムリムリ!と僕は返す。
水から上がれば暫定1番と、
私は2番目でいいからの相手をして24時間じゃ足りないのよ僕は。
さすがに3人を相手にできる器用さを持ち合わせていないことを
わかって欲しい念を送信すると、
爺さんが怪訝な表情を浮かべたように見えた。

ようやく走りを止めた鱸だが、
爺さんはまだボディランゲージを止めない。
僕はポンピングで両手が塞がり、
目で爺さんの訴えを一方的に聞く。

なになに?
今からそっぢさ行くから頑張って釣りあげておぐんなせ?
爺さんだけがココへ来るとしてもかなり遠回りをしなければならず、
健脚でも相当な時間がかかるだろう。
婆さんを引き合わせようと家に戻るなら、
その間に鱸を釣りあげ撤収し、この場をもぬけの殻にしておこう。

鱸を手前の緩流帯まで寄せてきた。
あと少し。
また豪快なエラ洗いが出た。
顔だけが水面に出る重々しいエラ洗いに、
おもわず驚きの声が漏れる。
悪くない大きさだ。
すると今度は鱸が僕の方に勢いよく向かってきたと思えば、
反対側に走り去る。
主導権を握っていたはずが鱸が奪い去る。
また戻ってきたかと思えば緩流帯の底に沈み膠着状態。
根掛かったかと疑いたくなるほど動かない。
なにこの強さ・・・・・・僕の知る鱸の強さではなかった。
透き通る水にその姿が見えた。
ちがう。鱸とちがう・・・・・・。
即座に同定できなかった。
アカメ?
背鰭の形は違えど、
そう思わせるほど吻から背にかけての盛り上がり。
いや、そんなわけないしそうだとしたらどえらいことだ。
丸々太ったタイリクスズキ?
それこそ鮎をたらふく喰ったスズキ?
ここでヒラスズキのヒの字も思い浮かばなかったのは、
清流で釣りをしているという
固定的な観念があったからだろう。
僕は糸の先にいる魚がヒラスズキだと認めることなく、
引っ張り合いは続いた。

ごく短い綱でする綱引きのような攻防が続き、
隙を見てオーシャングリップを差し出すも、
まだ相手は抵抗をやめない。
なんたる力。なんたる持久力。
重い魚体を空に向かって走らせ
勢い余ってエラ洗いをする。
怖い。
もう心臓に悪いからやめておくれ・・・・・・。
散々暴れ回り、ようやく観念した魚体が
ゆっくりと目の前に寄ってきた。
オーシャングリップを口にセットし、
その場で定位させたことで、急流の乱に終止符を打った。

魚体を眺めた第一声は、なにこの魚?
もうわけがわからない。
僕は爺さんを思い出し、
ピースサインを送ったらうんうんと何度か頷き返してくれた。
そのまま座り込み、
後ろに倒れ仰向けのまま川原から青空を見上げた。
快感とは緊張から一気に開放されたことを言うとどこかで読んだ。
魚釣りで快感てなによと笑われるに違いないが、
相変わらず水音は騒がしいが、快感はそれをも心地よいBGMとした。

しばらくして起き上がり魚を確認するが、
いまだ興奮は冷めないらしく判断ができない。
鱸に詳しい人に聞くしかないと即座に思い浮かんだのが
淡路島の鱸釣師。
自慢を含めておうかがいすると、
即座にヒラスズキの名前が返ってきた。
おもわずここ上流ですけどって
とんちんかんな返信をしたが、
常識の範囲でスズキが生息できるであろう上流部という
意味を行間から読み取ってもらえたはずだ。
以前、汽水域でヒラスズキを釣ったことはあるが、
成魚が淡水域まで進入してくる概念などなかった。
魚体をファインダー越しに見ると、
よく見ればよく見なくてもヒラスズキじゃないか。
あー恥ずかしい。

撮影を済ませたが爺さんはまだ来ない。
あのジェスチャーは迷宮入りである。
できれば、いや、絶対にヒラスズキを生きたまま水に帰したい。
もう釣られるなよ、ありがとうの気持ちを添えて
流れに帰すと、瀬の水を掬って二回顔を洗った。
その水は冷たく澄んでいて、
夢じゃないなとひとり笑った。

日中 川 水面 平鱸

日中 川 水面 平鱸

Rod : Rawdealer R703RR-S The Flicker WG
Reel :07 LUVIAS 2500R
Line : YGK G-soul Upgrade X8 1.2G
Leader : サンライン Nylon 25lb
Knot : FGノット
Lure : LIVE WIRE

※後日談
満足したのに僕は翌朝この場所にやってきた。
二匹目のドジョウ狙いだ。
幸い釣人の姿はないが、アタリのアの字もない。
その日の晩にも入ったがアタリのアの字もない。
翌朝も入ったがアタリのアの字もない。
雨が降ったのでその晩も強行したがダメだった。
単純に言えば結果は
『柳の下の二匹目のドジョウを狙う』だ。
しかしその都度釣れない理由を分析し、
自ら出した答えは大きな収穫だ。

なにより自然がもたらす恩恵を、
一尾のヒラスズキが教えてくれたことに感謝している。





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Posted by Миру Україні at 07:07 │ヒラスズキ
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