2024年01月06日
イトウは心に宿る28
書籍や映像で旅をテーマにした魚釣りを目にしてきた。
ある釣人はスタッフを連れて海外へ飛んだ。
またある釣人は釣り仲間と共に魚を求めた。
単独で彼の地へ赴いた釣人は現地ガイドを頼りにした。
さらにストイックな釣人は単独で挑んだ。
楽しみ方は釣人の数だけあり、どれも素晴らしく憧れた。
だが僕の釣旅はそのどれでもなく、
少なくともこれまで見聞きしたことがないスタイル。
僕は異性を連れての釣旅を計画した。
いや、正確には引っ付いてきたと言うべきか。
念願の北海道釣行を実行すべく、
フライト・スケジュールを彼女に伝えると、
しばらくおいてから同じ機を予約したことが返信されてきた。
残り席が僅かだったのに椅子取りゲームよろしく滑り込んできたが、
急な大型連休をよく取得できたものだ。
旅先で魚釣りを楽しみ女性も楽しむ、いや、
女性と楽しみ、暇潰しで魚釣りを楽しむ。
初めて出会う景色の中で、
あの子とあんなことやこんなことができるなんて、
あぁなんと素晴らしいことだ。
北の大地の気温が上昇し、タンチョウが舞い上がり
ヒグマも発情する。
独り釣旅のなんと寂しいことか、
野郎と一緒に行く釣旅はさぞむさ苦しいことだろう。
例え旅費の全てを肩代わりしてもらえるとしてもその選択はない。
孤独の時間を楽しむソロキャンパーだって本当は異性を欲しているに違いなく、
美女が炊事場へ向かう姿を目で追ってしまう性を隠しきれていないし、
ソロキャンガールが孤独を埋めるようにSNSで発信して同情を誘っている。
心の奥底では抜群に相性が良い相手を求めているんでしょう?
孤独のグルメより二人でグルメ。異論は認めない。
異性と行く釣旅という心地よい響きを前に、
SNSで釣りガールに痛いコメントをしているGG共は
ハンケチを噛んで悔しがり、
女日照りが続く野郎共には垂涎の的に違いない。
こんなことを心に思っても口に出したり、
ましてやネットで書いてしまえば敵が増えてしまうので、
他所で話すことはご法度だ。
そもそも全世界の人々を敵に回そうとも、
同性の親友だの友人だのそんなものにも興味はなく、
愛する異性が一人側にいてくれればいい。
できることなら胸の大きな方が
より好ましいというのも付け加えたい。
僕は超然とした態度で荷造りに取り掛かる。
スーツケースに荷物を収納するいわゆるパッキングでは
困難を極めた。
嵩張る荷物の最たるものはウェーダーとシュラフだ。
向かう先の気温の幅広さにも困惑。
日中は夏日、朝夕は冷蔵庫の中、
もちろん夜間はストーブなしに過ごすことはできない。
半袖からジャケットまでを用意せねばならずこれらも嵩張る。
圧縮袋なるものを入手して衣類を詰める。
袋の上から体重を乗せて空気を外へ追いやり真空状態へもっていく。
なかなか便利なアイテムだと感心していると、
横から旅の同行者である概(おおむね)ちゃんが全然甘いと物申す。
これ以上は出ないと反論するも、まだ残っているからと概ちゃんは引かない。
もういいからと拒否したものの、不敵な笑みを浮かべて袋を奪われた。
概ちゃんの手から無理矢理空気が絞り出されて行く様が
あの苦しい時間と重なり、腰が引けて目を背けたくなる。
もうやめてという叫びは火に注ぐ油でしかない。
ほらまだ出るじゃないと得意げに絞り出し、
全て出し切り膨らみがなくなった袋を見て僕は震えあがった。
ある釣人はスタッフを連れて海外へ飛んだ。
またある釣人は釣り仲間と共に魚を求めた。
単独で彼の地へ赴いた釣人は現地ガイドを頼りにした。
さらにストイックな釣人は単独で挑んだ。
楽しみ方は釣人の数だけあり、どれも素晴らしく憧れた。
だが僕の釣旅はそのどれでもなく、
少なくともこれまで見聞きしたことがないスタイル。
僕は異性を連れての釣旅を計画した。
いや、正確には引っ付いてきたと言うべきか。
念願の北海道釣行を実行すべく、
フライト・スケジュールを彼女に伝えると、
しばらくおいてから同じ機を予約したことが返信されてきた。
残り席が僅かだったのに椅子取りゲームよろしく滑り込んできたが、
急な大型連休をよく取得できたものだ。
旅先で魚釣りを楽しみ女性も楽しむ、いや、
女性と楽しみ、暇潰しで魚釣りを楽しむ。
初めて出会う景色の中で、
あの子とあんなことやこんなことができるなんて、
あぁなんと素晴らしいことだ。
北の大地の気温が上昇し、タンチョウが舞い上がり
ヒグマも発情する。
独り釣旅のなんと寂しいことか、
野郎と一緒に行く釣旅はさぞむさ苦しいことだろう。
例え旅費の全てを肩代わりしてもらえるとしてもその選択はない。
孤独の時間を楽しむソロキャンパーだって本当は異性を欲しているに違いなく、
美女が炊事場へ向かう姿を目で追ってしまう性を隠しきれていないし、
ソロキャンガールが孤独を埋めるようにSNSで発信して同情を誘っている。
心の奥底では抜群に相性が良い相手を求めているんでしょう?
孤独のグルメより二人でグルメ。異論は認めない。
異性と行く釣旅という心地よい響きを前に、
SNSで釣りガールに痛いコメントをしているGG共は
ハンケチを噛んで悔しがり、
女日照りが続く野郎共には垂涎の的に違いない。
こんなことを心に思っても口に出したり、
ましてやネットで書いてしまえば敵が増えてしまうので、
他所で話すことはご法度だ。
そもそも全世界の人々を敵に回そうとも、
同性の親友だの友人だのそんなものにも興味はなく、
愛する異性が一人側にいてくれればいい。
できることなら胸の大きな方が
より好ましいというのも付け加えたい。
僕は超然とした態度で荷造りに取り掛かる。
スーツケースに荷物を収納するいわゆるパッキングでは
困難を極めた。
嵩張る荷物の最たるものはウェーダーとシュラフだ。
向かう先の気温の幅広さにも困惑。
日中は夏日、朝夕は冷蔵庫の中、
もちろん夜間はストーブなしに過ごすことはできない。
半袖からジャケットまでを用意せねばならずこれらも嵩張る。
圧縮袋なるものを入手して衣類を詰める。
袋の上から体重を乗せて空気を外へ追いやり真空状態へもっていく。
なかなか便利なアイテムだと感心していると、
横から旅の同行者である概(おおむね)ちゃんが全然甘いと物申す。
これ以上は出ないと反論するも、まだ残っているからと概ちゃんは引かない。
もういいからと拒否したものの、不敵な笑みを浮かべて袋を奪われた。
概ちゃんの手から無理矢理空気が絞り出されて行く様が
あの苦しい時間と重なり、腰が引けて目を背けたくなる。
もうやめてという叫びは火に注ぐ油でしかない。
ほらまだ出るじゃないと得意げに絞り出し、
全て出し切り膨らみがなくなった袋を見て僕は震えあがった。