2022年04月01日
大阪 Y川 アカメ釣り

大阪Y川で釣ったアカメ。
事の重大さを恐れエイプリルフール記事に仕立てる目論見か、
はたまた100%捏造記事かもしれないし、
67%事実で33%虚構かもしれない。
忸怩たる思いで書き綴る大阪湾岸アカメ釣行。
あの衝撃的な出会いはいまだ記憶に鮮明であり、
ちょうど一年前にこの道を通った夜、
昨日の事のように今はっきりと想い出す。
季節はそう、確か暑くも寒くもなかったので晩春か初秋のお彼岸で、
淀川左岸、いや、大和川右岸のどちらかで絶対間違いないはずなんだけど。
ある夜のスズキ釣り。
その場所は下げ止まりから潮が満ち始めるとスズキが居なくなるので
納竿しようと思いつつ投げたプラグに明確な魚信。
スレなんかではなく間違いなく口で吸いこむように喰った感触が伝わったのだが、
ここから異常な引きが始まった。
ラインが勢いよく引き出され、その引き方が直感でスズキではないと確信。
ここでは大形のソウギョも確認していたしヤマトゴイの可能性もあり、
それらの姿が脳裏を過るも、魚体のどこかにスレでもなければ、
喰い方にも疑問が生じる。
落ち着いて対処するもロッドを強く持って耐えるのみでドラグの音が鳴りやまず、
結局数秒後にフックアウト。
回収したプラグのフックに鱗は付いていなかった。
スズキでもなければコイ科でもないこの感じ。
南国で幾度となく苦汁をなめた引き、
ある時は歓喜に震えた引きに酷似している。
為す術なく立ち尽くし、魚影が去った方の水面を
訝しみ見つめるしかなかった。
アカメは主な生息地とされる南国以外にも日本各地で確認されている。
ゆえに大阪に生息していてもなんら不思議ではないだろう。
ただし南国以外での個体数は極端に少ないと想像でき、
アカメを釣ろうとするのにスズキ狙いの偶然に任せるならば、
天文学的数字の確率で低いはず。
その証拠にスズキ狙いで釣ったという報告が皆無だからである。
いや、もしかすると想像以上に喰わせているかもしれない。
ただ湾岸というシチュエーションや、
アカメの力を考慮すると通常のスズキタックルでは主導権を掴むことができず、
フックアウトやラインブレイクで姿を拝むことができない事象があるのかもしれない。
大阪湾岸アカメ釣りの思索に耽る。
最も困難な要素といえば、自身のモチベーション維持だろう。
スズキを諦め、アカメに照準を合わせたタックルで、
釣れる保証など約束されていないアカメだけを狙い続ける。
きっと出撃するたび水辺で首を傾げ肩を落とすだろう。
それでもアカメが釣れると信じられるのか。
自分はやるのか、やらないのか。
やり続けるのか、諦めるのか。
自身のアカメへ対する想いと情熱が本物なのか試される。
ネットで『大阪 アカメ 釣り方』などと検索すれば
情報が出てくるのかも知れない。
仮に見つけたとしてもその情報は有益かつ信用に値するのか。
間違いなく疑念を抱くのだから最初から自分で予測と分析をする。
日中の干潮時に改めて地形を調べ直した。
まずはフックアウトした場所。
アカメはどこに潜み、どう動き、なぜここで腹を満たそうとしたのか。
さらに範囲を広げると、
知っていたつもりの場所だったのに新しい発見がいくつも見つかり、
有力な手掛かりを得られることができた。
あとは気象条件、水の動き、潮の干満、被食者の動き、
魚類の天敵である野鳥の存在、
先に釣人が入っていない運も必要だ。
ある日の夕刻。
アカメタックルを担いで本命場所へ向かった。
歩みを進めていると水辺に人影が見えた。
釣竿のシルエットが確認できた。先行者だ。
邪魔しないよう気配を消したまま静かに踵を返す。
本命場所がだめなら次の候補地へ向かう。
潮位を考慮しながら狙い方を組み立て直す。
これらの出来事が功を奏し、
アカメへと導かれることになろうとはこの時知る由もなかった。
自分の影を水面に落とさぬよう構えた。
投げるのはまだ少し早かった。
もう少し潮位が下げ水流に勢いが増したら、
目の前にある地形変化の底にアカメがつくはずだ。
そう、まだヤツはここには居ない。
今投げたところで水溜まりで遊ぶようなもの。
暗がりの水面を凝視し、流れが生まれるのを待つ。
もうすこし、もうすこし待つ。
時が訪れたならあの位置にプラグ投じ、こう流してここで喰わせる。
このような想像ができていないと、
闇雲に投げているだけでは釣れる気がしなかった。
何度もイメージをトレースする。
次第に広大な水面が一斉に動きだす。
さあそろそろだ。
儀式を始める。
10フィート2psロッドのジョイントよし。
ガイドリングを覗いて並び確認。
リールシートのダウンロックを増し締め。
スピニングリールのドラグ強度もよし。
PE3号と100ポンド・ナイロンショックリーダーを強く引っ張り
結束強度を確認。
プラグに接続するクロスロック・スナップを確認。
バーブレス仕様にしたST66のフックポイントの全てを指で触れてから、
振り子のように前に放り出した。
今宵は鬼が出るか蛇が出るか。
実釣開始。
数投目の回収間際だった。
硬質の魚信が伝わり緊張が破裂しそうになった。
いまの・・・・・・大形のキチヌがプラグを突っついたか。
いや、わからない。こんな大きなプラグに手を出すのだろうか。
ただひとつ言えるのはスズキの魚信ではなさそうだった。
記憶を辿れば、アカメ生息地ではこういった魚信が何度もあり
翻弄されてきた。
濡れたプラグを手にして眺める。
ボディを触って歯形などの傷の有無を確認したが
これといった確証を得られなかった。
ただこれまで毎夜魚信もない修行のような釣りを続けてきたのだから、
今夜こそ何か起こりそうな予感が全身を駆け巡った。
僕は知っている。今お前はそこに居る。
ほんの目の前。姿を見せることなくすぐ足元まで喰いにきた。
いまアカメは頭を右に向けて上流から下ってくる被食者を待っている。
潮が引くと干上がってしまう場所だから、
確実に被食者は下ってくる。利口なアカメはそれをよく知っている。
流れを横切るようプラグを軽く投げた。
すぐさまラインを巻き取りながらメンディングし、
リールとシンクロさせるようロッドを捌いて大胆にプラグを潜行させ、
あとはアカメの目の前を横切るようプラグを送り込んだ。
水面に刺さるラインの先にあるプラグが扇状に流れる。
もう少し・・・・・・そう、喰うならココだ。
ドンッ!!
重く激しい衝撃と同時にロッドを持っていかれそうになった。
奪い返すように持ちこたえるも、瞬時にドラグが突破されラインが下流へ走りだした。
声もでない。
ロッドを立てようと踏ん張るのにロッドが倒れたままで弧を描ききれていない。
これではフッキングが完璧に決まっておらず不安が過る。
予感的中、ロッドティップが少し上に跳ね上がりラインが力なく落ちた。
外れた・・・・・・。
プラグを回収してフックを確認する。
曲がりこそしていないがわずかにフックポイントが鈍っている。
やはり刺さっていなかったのだろう。
落ち込んでいる暇はない。
まだ違う個体がいるはずだ。
アカメとは群れで行動する習性がある。
自分の気持ちを平静に保つのは難しかったが、
この状況を客観的に眺め次の一手に備える。
今夜は狂おしいほどにアツかった。
すぐに投げるが正解か、しばし待つのが正解か。
プラグはそのままにしたいが、
鈍ったフックで続行するわけにいかず、
しかしフックを交換する手間が惜しいので同一プラグのカラー違いに交換。
魚釣りは常に選択の連続だ。
どこに正解があるのか自らの判断で紐解いていく。
場荒れは落ち着きを取り戻しただろうか。
獲物の奪い合いで喰い気が立ってやしないか。
指でリーダーを滑らせ傷がないのを確認し、
慎重かつ大胆にプラグを然るべき位置へ投じた。
潮位がみるみる下げている。
潮回りが大きい日はどうもやりにくい場所だ。
先ほどよりプラグを潜らせるとオイシイ深度を通り過ぎるため、
ラインの巻き取り加減をしながら送り込む。
ココ。
喰うならココ。
ドンッ!!
持って行かれそうになるロッドを今度こそ食い止めた。
タックルを持って行かれそうになるなんて。それに備えているなんて。
身近な水域、それも岸釣りでそんなことがあるのか。
強烈に弧を描こうとするロッドだったが、追い合わせを叩きこむ。
これだけやれば針先がアカメのクチを捉えてないはずがない。
反撃の様子を伺いながら、まだまだスプールからラインの放出が止まらない。
落ち着いて左手をリールフットからフォアグリップに移して引きに耐える。
スプールが一定速度で滑りながら事務的にドラグ音が鳴り響く。
なんだこの時間は。
自分は本当に魚と対峙しているのか。変な錯覚に陥ってしまう。
強かった魚を例えるなら、シイラやバラムツがそうだったか。
この引きはスズキなんかではなく、アカメしか考えられない。
これこそ紛れもなくアカメのファースト・ランだ。
ふと、ラインが上昇した気がした。
しまったと思った瞬間、
随分向こうで影が水面を割って暴れた。
とんでもなく重いエラ洗いだ。
幸いラインテンションは張ったままだけど完全に油断していた。
こんな大事なシーンでもバーブレスフック・スタイルは崩さない。
釣人側を絶対有利にさせず、相手(魚)にも逃げられる機会を与える。
これよ、この緊張感溢れるやりとりが釣りあげた後の価値を生み出す。
ただ出ていったラインを巻き取ればいいだけではない。
エラ洗いを防ぎつつ、水底に沈む障害物も警戒せねばならず、
ロッドを立てるのか、寝かせるのか、
ラインテンションは、ドラグ力は。
これまで積み重ねてきた経験のもと、自分のスキルが試される。
下流へ突っ走る魚体が力強くラインを引っ張りながら、
大きく半円を描きながら上流に向かってきた。
この動きはこちらの思惑ではなくアカメの意思だ。
なんという体力。
なんのコントロールもできておらず僕は遊ばれている。
ある程度ラインの回収は進んだが目の前あたりまで来て底へ突っ込み出した。
ラインからイヤな感触が伝わる。地形に擦れている。
できればここで魚体を浮かせておきたいのだけど、
アカメはまったく言うことを聞いてくれやしない。
ラインを緩めるか、いや、強引にいくか。
そんな考える時間をも与えてくれず、
ロッドティップが水面に突き刺さらんとしながら膠着状態になった。
一難去ってまた一難。
さあどうする。ロッドを煽ってラインを張ってももまったく動かない。
引いてダメならなんとやら。
ラインテンションを抜く勇気を出そう。
ラインをフリーにしてしばらく待つ。
何秒経過したか。
弛めたラインを軽く弾くようにロッドを煽り動きを促す。
ラインが障害物に絡んだか、アカメが地形に隠れて動じないのか。
まったく反応がない・・・・・・万事休す。
さらに十数秒経過。
次に軽くラインテンションを保ったまま様子を伺っていると、
ついに動きだした。
やった、繋がっていた。アカメはゆっくりと下流へと泳ぎ出す。
不意のエラ洗いと底への張り付きでもフックアウトせず二度の好運に恵まれたが、
ただただ遊ばれている感が否めず、自分が負けている気がしてならない。
また流れに乗って下流へ走りだした。
その勢いに衰えを感じさせない。
こんな攻防が続くなんて。
もういい加減にしてほしいとさえ思わされる。
ふとライン浮上に気付いた。
今度は逃さずロッドを上流側へ倒してエラ洗いに対抗。
そしてもう一発、水面暴発エラ洗い。
顔を振るたびロッドが叩かれる。
闇夜に黒い魚影が少し見えた。
こんな心臓に悪いエラ洗いを他に知らない。
やや疲れが見え始めたか、出されたラインの回収に出る。
やはり力尽きたらしく良い子ちゃんで寄ってくる。
長い。めちゃくちゃ長く感じる。
ここでフックアウトなんてしたら二度と立ち上がれないかもしれない。
ロッドを下流へ倒し浅くなった岸へと誘導する。
上手く事が運んでいるようだけど、まだ遊ばれているような気がする。
目の前まで寄ってきたが、また走られた。
僕も追いかけるように走らされ、足が引っ掛かり転倒。
片手で水底を押さえ、もう片手はロッドを離さない。
体の九割が水没した。
水から立ち上がりいよいよ大詰め。
アカメの頭をグイとこちらに向けて岸へ近づけた時に目にした魚体は、
紛うことなくアカメ。
凄い。素晴らしい。
オーシャングリップを分厚い下顎に差し込んだ。
それでもまだ逃げられそうで怖かった。
陸に上げず浅瀬に寝かせたまま、
開いた口からプラグを外そうとプライヤーを近づけると、
触れる前にプラグが外れ落ちた。
フック・・・・・・確実に刺さってなかったのだろうか。
追い合わせもしたし、あれだけのテンションが掛かっていながら。
ST66の一本が半開きに伸びていた。
水中でゆっくりエラを動かす魚体を眺める。
とんでもないことを成し遂げた。
あまりの出来事に勝利の雄叫びだのガッツポーズも出ない。
頬が緩むこともなかった。
静かに、ただひたすらにいま起きていることを実感していた。
撮影を済ませると、アカメの頭を沖に向けて送り出した。
夜の静寂を少しだけ騒がしくさせたが、
アカメが元居た場所へ帰るのを見届けると、戻ってきた静寂の境に浸った。
僕は足を水に浸けたまま、岸に腰を下ろした。
次のキャストはない。
いま起きたことの一部始終を忘れたくない。
だから良いところで終わっておく。
先ほどのシーンが頭の中で何度も何度も繰り返された。
Posted by Миру Україні at 07:07
│アカメ