2025年01月09日
イトウは心に宿る45
豊かな森の奥から流れ出る澄んだ水にオショロコマ達が泳ぎ、
次に投じたルアーに喰いつくだろうことはわかりきっていた。
特別な技巧を凝らさずとも、これまでやってきたように
水の流れを読んでルアーを投じた。
透き通る水中にプラグが踊ると、
底に潜んでいた黒い影たちが勢いよく飛び出してくる。
水流に押されてターンするラインを追うようにプラグも流れを横切り、
オショロコマであろう黒い影達も追尾してくる。
そして・・・・・・喰わない。
なんだなんだと苦笑いするしかなく、
同様のことが数回繰り返されると苦虫を噛み潰したようになりそうで、
まてまて大自然の中で遊ばせてもらっているのに、
そんな荒んだ気持ちになってはいけないと軽く舌打ちひとつ平静を装う。
ひとつ上のひらきへ移動して、ここでも追尾だけで終わり、
もうひとつ上のひらきでも喰い損ねる光景を目の当たりにすると、
オショロコマのぶんざいで・・・・・・などと乱暴な言葉を口走りそうになる。
初魚が簡単に釣れてしまうのはむしろ不幸なことであり、
最初の一尾に辿り着くには苦労を重ねた方が、
出会えた瞬間により味わい深い思い出となる。
しかしだ、目の前に狙いの魚が複数尾居て、
しかもそれらは喰い気満タンの据え膳状態。
これで釣り上げられないのは釣人の技量の問題ではないかと地団太を踏む。
あまりにもオショロコマ達が小形でプラグに喰いつかない感じに、
プラグのサイズを5ミリ小さなものに交換する。
小型のルアーケースを開け、
お目当てのプラグを摘まみだそうと視線を落とす時も周囲に気を配る。
そんな一瞬の隙にヒグマに間合いを詰められてはならないと警戒を怠らない。
ここは北海道の中でも断然トップのヒグマ生息地帯で、
しかもヒグマのご馳走達がこぞって海から川に集結する季節ときたもんだ。
そんな場所でわざわざ小魚を釣る旅人ひとり。なんて愚かな行為。
そういえばシマフクロウ撮影で出会ったひとりの御仁が
真剣な眼差しでヒグマ対策を皆に教えてくれた。
「決して背を向けて逃げてはならず、
睨みつけたままヒグマが目の前ニメートル接近するまで我慢する。この距離が大事だ。
さらに接近したなら相撲の技である猫騙しを食らわせる。そうすると驚いて逃げるのだ」
というもの。
知り合って間もないご年輩のため、そんなアホなという言葉だけを心で発して笑い、
これはボケのパスを投げたものだと判断できたので続けざまに、
クマのプーさんちゃうねんぞというツッコミが喉元まで上がってきたが、
残りのお二人が神妙な面持ちで頷いていたのを見て、僕は軽く横に仰け反った。
え、本気?笑うとこちゃうの?
これはまるで、
夜のお店で囁かれた女性のリップサービスを本気に受取り、
そのおばはん、もとい女性は既婚者だというのに夜な夜な貢ぎに貢ぎ、
一度だけ接吻をしてもらったことで童帝(わらべのみかど)を強く刺激されたらしく、
有頂天になり、おばはんの愛の住処である住宅ローンの完済まで数年に渡り貢いだ
元釣り仲間の同級生みたいに愚かな、もとい、ピュアなハートだ。
叶わぬ恋のリターンはとりもなおさず火の車だったわけだが、
生きていく上で慧眼を磨かないと地獄を見ることになる典型例。
いやいや当の本人は女性が望むものを献上し、喜ぶ女性を見て自分も嬉しい。
不貞行為なく童帝を喜ばせつつ大金を得るウィンウィン疑似恋愛かあ、
やるじゃないか魔性の女め。
余談さておき、さあ貴方たちは漏らさず何メートルまでヒグマの接近に耐えられるのかしら。
クマと対戦したマサ斎藤じゃないのだから、
突進されたら脊髄反射が如く逃げ出すでしょうよ。
その気にさせては寸止めするオショロコマ達よ、
キスだけでなくそろそろ銜えてください。
次に投じたルアーに喰いつくだろうことはわかりきっていた。
特別な技巧を凝らさずとも、これまでやってきたように
水の流れを読んでルアーを投じた。
透き通る水中にプラグが踊ると、
底に潜んでいた黒い影たちが勢いよく飛び出してくる。
水流に押されてターンするラインを追うようにプラグも流れを横切り、
オショロコマであろう黒い影達も追尾してくる。
そして・・・・・・喰わない。
なんだなんだと苦笑いするしかなく、
同様のことが数回繰り返されると苦虫を噛み潰したようになりそうで、
まてまて大自然の中で遊ばせてもらっているのに、
そんな荒んだ気持ちになってはいけないと軽く舌打ちひとつ平静を装う。
ひとつ上のひらきへ移動して、ここでも追尾だけで終わり、
もうひとつ上のひらきでも喰い損ねる光景を目の当たりにすると、
オショロコマのぶんざいで・・・・・・などと乱暴な言葉を口走りそうになる。
初魚が簡単に釣れてしまうのはむしろ不幸なことであり、
最初の一尾に辿り着くには苦労を重ねた方が、
出会えた瞬間により味わい深い思い出となる。
しかしだ、目の前に狙いの魚が複数尾居て、
しかもそれらは喰い気満タンの据え膳状態。
これで釣り上げられないのは釣人の技量の問題ではないかと地団太を踏む。
あまりにもオショロコマ達が小形でプラグに喰いつかない感じに、
プラグのサイズを5ミリ小さなものに交換する。
小型のルアーケースを開け、
お目当てのプラグを摘まみだそうと視線を落とす時も周囲に気を配る。
そんな一瞬の隙にヒグマに間合いを詰められてはならないと警戒を怠らない。
ここは北海道の中でも断然トップのヒグマ生息地帯で、
しかもヒグマのご馳走達がこぞって海から川に集結する季節ときたもんだ。
そんな場所でわざわざ小魚を釣る旅人ひとり。なんて愚かな行為。
そういえばシマフクロウ撮影で出会ったひとりの御仁が
真剣な眼差しでヒグマ対策を皆に教えてくれた。
「決して背を向けて逃げてはならず、
睨みつけたままヒグマが目の前ニメートル接近するまで我慢する。この距離が大事だ。
さらに接近したなら相撲の技である猫騙しを食らわせる。そうすると驚いて逃げるのだ」
というもの。
知り合って間もないご年輩のため、そんなアホなという言葉だけを心で発して笑い、
これはボケのパスを投げたものだと判断できたので続けざまに、
クマのプーさんちゃうねんぞというツッコミが喉元まで上がってきたが、
残りのお二人が神妙な面持ちで頷いていたのを見て、僕は軽く横に仰け反った。
え、本気?笑うとこちゃうの?
これはまるで、
夜のお店で囁かれた女性のリップサービスを本気に受取り、
そのおばはん、もとい女性は既婚者だというのに夜な夜な貢ぎに貢ぎ、
一度だけ接吻をしてもらったことで童帝(わらべのみかど)を強く刺激されたらしく、
有頂天になり、おばはんの愛の住処である住宅ローンの完済まで数年に渡り貢いだ
元釣り仲間の同級生みたいに愚かな、もとい、ピュアなハートだ。
叶わぬ恋のリターンはとりもなおさず火の車だったわけだが、
生きていく上で慧眼を磨かないと地獄を見ることになる典型例。
いやいや当の本人は女性が望むものを献上し、喜ぶ女性を見て自分も嬉しい。
不貞行為なく童帝を喜ばせつつ大金を得るウィンウィン疑似恋愛かあ、
やるじゃないか魔性の女め。
余談さておき、さあ貴方たちは漏らさず何メートルまでヒグマの接近に耐えられるのかしら。
クマと対戦したマサ斎藤じゃないのだから、
突進されたら脊髄反射が如く逃げ出すでしょうよ。
その気にさせては寸止めするオショロコマ達よ、
キスだけでなくそろそろ銜えてください。
Posted by Миру Україні at 07:07
│イトウ