2016年09月08日
夏の巻3「海の恵みをいただく」

南中の肌を刺すような陽射しに負けず食料確保作戦を開始する。
今回のキャンプはなんちゃってサバイバルをテーマとしており、
自分の食べる分は自分で釣らないとお昼ご飯はナシと
子供に重圧を与え、不敵な笑みを浮かべてみてやる。
まずはアオリイカ釣りのお手本を披露することに。
ちなみにアオリイカは魚じゃないけれど魚釣りの中で
もっとも簡単な釣りだ。
小学生の初挑戦であっても二桁釣果を約束してあげよう。
ゆびきりげんまんだってしてあげる。
実績としては非力な娘達がそうだったし、
以前教えてあげたコなんて、釣場で大人エギンガーに
「(誰も釣れてないのに)どうやったらそんなに釣れるの?」と
聞かれたことがあると嬉しそうに報告をしてくれた。
釣り方は市販の餌木を用いたいわゆるエギングだ。
要点は三つ。初心者に難しいことを言っても理解できないので、
簡素にその三つだけを教える。
今年の初投、いまから本当に一投目で釣るからよく見ておくようにと。
投げる。沈める、動かす、また沈める、重みが乗った。
横で見ていた子供が驚嘆したのちに笑う。
説明しながら釣ることのなんと説得力のあることよ。
しかし、今年はおかしかった。
二投目、三投目、四投目でも掛からなかった。
おかしい。今年はおかしいぞ。五投連続で釣れないと。
同時にやっていた子供のロッドが曲がった。よしやった。

おめでとう。超がつくほど簡単に釣れるアオリイカだけど、
それは海が豊かな証拠である、と教える。
そこに生き物がいないと、いくら道具が高価でも、
腕前が良くても釣れないのだから。だから自然に感謝。
タックルは6フィートのライトパワーのスピニングロッドに
ナイロン8ポンド、そして市販のままのエギ。これで十分。
僕のは川でも海でも湖でも同じのスピニングのローディーラー。
エギの色はなんでも釣れるし、小潮の南中、凪、潮どまりでも、
そこにアオリイカがいれば釣れる。
ただし怒涛の入れ掛かりになる最狂時合いは朝まずめ夕まずめ。
とはいえ要点の三つを外すと、
その日はボーズか五十杯の差が生まれる。
ちょっと大げさだけど、それくらいの勢い。
五十杯以上釣ろうと思えばエギの色を変更したり、
ウエイトの増減、エギの操作、etc...が必要になってくるが、
よほど条件が悪くない限り(大荒れ)、
食べる分とお土産分の二十杯位なら肩肘張らずに確保できる。
一般的なエギング概念と(しゃくって、沈める)ほぼ同じだけど、
一般的な方法と比較すると、エギを沈めている間に、
こちらはすでにアオリイカの重みを感じてリールを巻いている。
テクニックなんてほどのものはなく、
僕は釣人ではなく自然観察者なので、
アオリイカの習性を利用しているだけのこと。
相手は老獪でも狡猾でもない今年生まれの新子ちゃんだ。超簡単。

釣果自慢がために不要な分まで持ち帰るのは愚の骨頂。
釣れると面白いけれど、必要以上に釣ることのないよう
子供に教えた。
さあお昼は烏賊素麺だ、姿焼きだ。
えーまだ釣るの?
フレームの外で泳ぐ眩い水着三人組が遠くに見える。
暑いしとっととベースキャンプに戻ろうぜと心の中で呟いた。