2024年03月04日
イトウは心に宿る32
街路樹の葉は暖色に染まり、
中には落葉して地面を彩るものもある。
北海道はすっかり秋なのだ。
季節の進行に驚き、一足お先の紅葉ドライブ。
おそるおそるパワーウインドウなるもののスイッチを押すと
自動で窓が下がることに感動。
秋の澄んだ空気が車内を巡り、
快適性を優先して装備されているエアコンも、
やはり自然の空気の美味しさには敵うまい。
コンプレッサーは重量増しになるだけでデメリットでしかないと
吐き捨てようものなら概ちゃんに肩を揺すられ、
「エアコンのない車なんて乗りたくないで」と言われる。
車内は普通の声量で会話ができるほど静寂なエンジンで、
サスペンションは乗り心地を重視しているのであろう
スプリング・バネレートと、ショックアブソーバーの
コンプレッションとリバウンドのセッティングが絶妙で、
ホールド性は皆無のくせに無駄に厚みのあるシートと相まって
乗り心地の良さだけは堪能できる。
移動するだけの手段ならこの上なしの乗り物であるが、
スロットルに呼応した吸気音も、耳をつんざく排気音もなく、
カムプロフィールもマイルドな吹け上がりで
まったく退屈な乗り物だ。
あの尖ったカム作動角による不安定なアイドリングが
しびれるのに、なんてことだろう信号で停車するたびに
黙り込むエンジンに戸惑ってしまう。
僕の肩を揺すりながら「アイドリング・ストップは普通やから」
「これが普通の車やねんで」と概ちゃんは言った。
この車とは一週間だけのお付き合いだが、
やはり自分で組んだエンジンでなければ愛せないと僕は寂寥を覚えた。
レンタカー店から最寄りの市場へ到着。
最寄りといえどここは広大な地北海道ゆえに
距離と時間概念が少々違うらしく、自動車で三十分も離れた場所なのに
すぐそこになるらしい。
しかも信号がほとんどなく渋滞とも無縁につき、
三十分走行すれば相当な距離を移動することになる。
概ちゃんは水辺に直行してもいいと気遣ってくれるが、
試算によると到着時間は水辺の下見すら不可能な時間帯なので、
旅行を存分に楽しむべく料理に舌鼓を打つことにする。
北海道の美味しいものといえば、北海道で食べたいものは、
北海道ならではといえば、海鮮でしょう!と概ちゃんと意気投合。
古い建物の駐車場に滑り込むと料金徴収ゲートはあるものの
稼働しておらず無料で停められた。
高知県の有名なんちゃら市場は、
数千円の買い物をしないと駐車料金をとるせこいシステムなのに、
ここはなんと親切なのだろう。
なんちゃら市場は義子の職場だったので遠慮なく言わせてもらう。
駐車場から市場の入口へ向かう途中でスマホのアラームが鳴った。
十四時四十五分だ。後場の終わり直前なので株価を確認し、
安ければ買い、高ければほくそ笑み、
値動きが小さければつまらんとスマホの画面を閉じる。
旅行中であってもたった数秒の確認で得ができる。
土地を貸している人の怠惰な儲けには敵わないけれど、
投資家も寝ている間や遊んでいる間も利益がでる。
折しもコロナ渦からの復活中で、17000円まで落ちた日経平均株価が
27000円まで上がり、この夏は乱高下していたので狙い通り
下がり切った所で買い続ければ後に左団扇。
ただのサラリーマンが独学でお小遣いを一千万円にする目標は
夢ではなく、大袈裟に言えば雪だるま方式で現実のものとなる。
当初は数千円の利益が出て喜べていたのが、
数万や十数万円の利益ではさほど表情に出ることもなく、
そのうち百万円単位を布団の中で右から左へ動かすようになる。
特技は投資、趣味は通帳を眺めること。
とはいえ現金化していないので
単に数字が大きくなっているだけなのだけど。
観光客相手の市場はコロナ渦で厳しい状況だったことだろう。
補助金で逆に潤っていたお店もあるかもしれないが・・・・・・、
旅行にきたならその地へお金を落としていきたい。
すっかりお昼時を逃したのに、
市場は観光客が多く活気があった。
初めて食べるサクラマスのお造りは悪くないが、
今後どうしても食べたくなるほどではなかったので、
釣り上げたらこれまで同様、元気なうちに水に帰そうと思った。
そんなサクラマスの上を行く美味しさはトキシラズのお造り。
トキシラズとはシロザケのことで、こういう味を絶品という。
さらに地元ではお目に掛かれないホッケのお造りだが、
これまた優勝である。
惜しむらくは本物のシシャモが見当たらなかったことだが、
それは仕方ないとして、あとはボタンエビにエンガワ、
花咲ガニ、蟹汁、イカにイクラ、
あぁお口の中が幸せになれるオンパレード。
温かいご飯も用意されており、とにかくご飯がすすむ。
さらには若い女性店員さんが炙りサケをおまけしてくださり、
その味に概ちゃんと顔を見合わせ大満足。
孤独のグルメではこれだけ沢山食べられないが、
二人のグルメはお互いのを食べられる特典がある。
チョコレートパフェとフルーツパフェを迷った時は、
それぞれ注文すればどちらも食べられる。
お腹を満たしたところで市場をぐるりとすれば、
お土産屋があった。
ここ北海道はヒグマがサケを銜えた木彫りの原産地であり、
日本中の実家に鎮座する三大置き物のひとつである。
残り二つは信楽の狸、最後はこけし。
自分が気に入り購入するのは問題ないが、
我々世代に対してのお土産であればもはやテロ行為。
そんな団塊世代あるあるを笑いながら眺めていると、
ご時世に対応した超可愛いぬいぐるみがあった。
お恥ずかしながら初の北海道旅行なので
いつから定番なのか知らないけれど、
売場面積の多くをシマエナガが占領している。
エナガはお馴染みの野鳥だけど、
シマエナガのデフォルメはなんて可愛いのだろう。
この可愛さに参ってしまい、
僕は持って帰られる最大サイズのシマエナガを連れて帰ることにし、
概ちゃんもなにやら色々と選んでいた。
このご時世に支払いは現金のみだったがお金を落とすに丁度良く、
ご高齢のおねーさん店主にお釣りは辞退することを伝えて帰ろうとしたら、
それはダメだと追いかけてきた。
おねーさんがちょっと待っててと言い残し、
一度戻って僕に手渡してくれたお菓子にはフィナンシェと書かれていた。
あら、これは縁起がいい。フィナンシェはフランス語で金融家。
おねーさんの三時のおやつをいただいて申し訳なかったが、
この味もまた美味しい思い出のひとつとなった。
中には落葉して地面を彩るものもある。
北海道はすっかり秋なのだ。
季節の進行に驚き、一足お先の紅葉ドライブ。
おそるおそるパワーウインドウなるもののスイッチを押すと
自動で窓が下がることに感動。
秋の澄んだ空気が車内を巡り、
快適性を優先して装備されているエアコンも、
やはり自然の空気の美味しさには敵うまい。
コンプレッサーは重量増しになるだけでデメリットでしかないと
吐き捨てようものなら概ちゃんに肩を揺すられ、
「エアコンのない車なんて乗りたくないで」と言われる。
車内は普通の声量で会話ができるほど静寂なエンジンで、
サスペンションは乗り心地を重視しているのであろう
スプリング・バネレートと、ショックアブソーバーの
コンプレッションとリバウンドのセッティングが絶妙で、
ホールド性は皆無のくせに無駄に厚みのあるシートと相まって
乗り心地の良さだけは堪能できる。
移動するだけの手段ならこの上なしの乗り物であるが、
スロットルに呼応した吸気音も、耳をつんざく排気音もなく、
カムプロフィールもマイルドな吹け上がりで
まったく退屈な乗り物だ。
あの尖ったカム作動角による不安定なアイドリングが
しびれるのに、なんてことだろう信号で停車するたびに
黙り込むエンジンに戸惑ってしまう。
僕の肩を揺すりながら「アイドリング・ストップは普通やから」
「これが普通の車やねんで」と概ちゃんは言った。
この車とは一週間だけのお付き合いだが、
やはり自分で組んだエンジンでなければ愛せないと僕は寂寥を覚えた。
レンタカー店から最寄りの市場へ到着。
最寄りといえどここは広大な地北海道ゆえに
距離と時間概念が少々違うらしく、自動車で三十分も離れた場所なのに
すぐそこになるらしい。
しかも信号がほとんどなく渋滞とも無縁につき、
三十分走行すれば相当な距離を移動することになる。
概ちゃんは水辺に直行してもいいと気遣ってくれるが、
試算によると到着時間は水辺の下見すら不可能な時間帯なので、
旅行を存分に楽しむべく料理に舌鼓を打つことにする。
北海道の美味しいものといえば、北海道で食べたいものは、
北海道ならではといえば、海鮮でしょう!と概ちゃんと意気投合。
古い建物の駐車場に滑り込むと料金徴収ゲートはあるものの
稼働しておらず無料で停められた。
高知県の有名なんちゃら市場は、
数千円の買い物をしないと駐車料金をとるせこいシステムなのに、
ここはなんと親切なのだろう。
なんちゃら市場は義子の職場だったので遠慮なく言わせてもらう。
駐車場から市場の入口へ向かう途中でスマホのアラームが鳴った。
十四時四十五分だ。後場の終わり直前なので株価を確認し、
安ければ買い、高ければほくそ笑み、
値動きが小さければつまらんとスマホの画面を閉じる。
旅行中であってもたった数秒の確認で得ができる。
土地を貸している人の怠惰な儲けには敵わないけれど、
投資家も寝ている間や遊んでいる間も利益がでる。
折しもコロナ渦からの復活中で、17000円まで落ちた日経平均株価が
27000円まで上がり、この夏は乱高下していたので狙い通り
下がり切った所で買い続ければ後に左団扇。
ただのサラリーマンが独学でお小遣いを一千万円にする目標は
夢ではなく、大袈裟に言えば雪だるま方式で現実のものとなる。
当初は数千円の利益が出て喜べていたのが、
数万や十数万円の利益ではさほど表情に出ることもなく、
そのうち百万円単位を布団の中で右から左へ動かすようになる。
特技は投資、趣味は通帳を眺めること。
とはいえ現金化していないので
単に数字が大きくなっているだけなのだけど。
観光客相手の市場はコロナ渦で厳しい状況だったことだろう。
補助金で逆に潤っていたお店もあるかもしれないが・・・・・・、
旅行にきたならその地へお金を落としていきたい。
すっかりお昼時を逃したのに、
市場は観光客が多く活気があった。
初めて食べるサクラマスのお造りは悪くないが、
今後どうしても食べたくなるほどではなかったので、
釣り上げたらこれまで同様、元気なうちに水に帰そうと思った。
そんなサクラマスの上を行く美味しさはトキシラズのお造り。
トキシラズとはシロザケのことで、こういう味を絶品という。
さらに地元ではお目に掛かれないホッケのお造りだが、
これまた優勝である。
惜しむらくは本物のシシャモが見当たらなかったことだが、
それは仕方ないとして、あとはボタンエビにエンガワ、
花咲ガニ、蟹汁、イカにイクラ、
あぁお口の中が幸せになれるオンパレード。
温かいご飯も用意されており、とにかくご飯がすすむ。
さらには若い女性店員さんが炙りサケをおまけしてくださり、
その味に概ちゃんと顔を見合わせ大満足。
孤独のグルメではこれだけ沢山食べられないが、
二人のグルメはお互いのを食べられる特典がある。
チョコレートパフェとフルーツパフェを迷った時は、
それぞれ注文すればどちらも食べられる。
お腹を満たしたところで市場をぐるりとすれば、
お土産屋があった。
ここ北海道はヒグマがサケを銜えた木彫りの原産地であり、
日本中の実家に鎮座する三大置き物のひとつである。
残り二つは信楽の狸、最後はこけし。
自分が気に入り購入するのは問題ないが、
我々世代に対してのお土産であればもはやテロ行為。
そんな団塊世代あるあるを笑いながら眺めていると、
ご時世に対応した超可愛いぬいぐるみがあった。
お恥ずかしながら初の北海道旅行なので
いつから定番なのか知らないけれど、
売場面積の多くをシマエナガが占領している。
エナガはお馴染みの野鳥だけど、
シマエナガのデフォルメはなんて可愛いのだろう。
この可愛さに参ってしまい、
僕は持って帰られる最大サイズのシマエナガを連れて帰ることにし、
概ちゃんもなにやら色々と選んでいた。
このご時世に支払いは現金のみだったがお金を落とすに丁度良く、
ご高齢のおねーさん店主にお釣りは辞退することを伝えて帰ろうとしたら、
それはダメだと追いかけてきた。
おねーさんがちょっと待っててと言い残し、
一度戻って僕に手渡してくれたお菓子にはフィナンシェと書かれていた。
あら、これは縁起がいい。フィナンシェはフランス語で金融家。
おねーさんの三時のおやつをいただいて申し訳なかったが、
この味もまた美味しい思い出のひとつとなった。
2024年03月02日
イトウは心に宿る31
搭乗口へ集まる人々の装いを見て思わず笑ってしまう。
気温にそぐわない厚着をした我々とは反対の、
薄着でさらにはサンダルを履いた人々がいる。
どうやら薄着の人達は沖縄行きの飛行機に乗るらしく、
その誰もが若くて陽気が弾けている。
沖縄に到着するなり海に飛び込むべく、
きっと服の下はもう破廉恥なビキニではないかとも思わされた。
それに対して我々北海道行きの厚着派は、
平均年齢高めでどこか鬱屈としており、
薄着派とは混じることのない明確なサーモクラインが引かれていた。
思わず沖縄もいいな・・・・・・と口から零れてしまうと、
概ちゃんが、
「沖縄にはどんな魚がいるんやろーって考えてる。すぐ魚のことやし」
なんて言い出し、これはご名答。
僕の頭の中では地味な色をしたロウニンアジではなく、
カスミアジのような色鮮やかなお魚ちゃんや、
色取り取りの熱帯魚ちゃんが群れを成し、
白い砂浜に寝転がっていたり、胸を揺らして浅瀬で戯れていた。
これからヒグマが待つ北海道の冷たい水で糸を垂らす奴がいるだなんて、
沖縄へ行く彼女達の誰が想像できよう。
十時五十六分、乗客を待つ旅客機に乗り込み、
指定していた窓際に着座した。
事前に席を予約する際に概ちゃんに抜け駆けしていたので
彼女の席は僕の隣ではなく、通路を挟んだ僕の左斜め後ろだった。
この意味のない微妙な距離感に複雑な想いをした。
十一時二十分、
三ヵ月前に概ちゃんと観に行ったトップガン・マーヴェリックに
登場したスーパーホーネットを彷彿とさせるほどの加速度はなかったが、
大きな機体は宙へ舞い上がり地上に並ぶ建物をみるみる小さくした。
窓の外にあるのはひたすら広がる雲海と濃い青をした空。
地上では体験できない別世界の景色は、
聖帝サウザーの気分にさせるに十分であり、
下界で汗水を垂らしてひっきりなしに働く下々の民に向かい、
東京証券取引所の後場終わり十五時までしっかり経済を回せと、
頬杖を突きながら二時間だけの王座を満喫する。
空の上で正午を跨ぎ、北海道へ向かっている現実が僕に語りかけてくる。
最終目標の魚であるイトウを釣ることができたなら、
僕はなにを感じ今後どう生きるのか。
イトウは難しい魚ではないと想像でき、
イトウが生息できる環境が整っていたならばきっと釣れる。
初魚との出会いは人生で一度きりなのだから、
これまで同様、出会うまでの過程を大切にしよう。
あれこれ想像するうちに、
釣り上げてからのことを考えるのは野暮だと気付いた。
次第に眼下にはまさに航空写真で見る地上が現れ、
陸と海の境となる海岸線が延々と続き、そこを通過すると
今度はどこまでも広がる緑の大地を飛んだ。
機はゆっくり高度を下げるが、
見渡す限り建物がないことに気づき、
本当に日本だろうかと疑いつつ、これが北海道なのだ。
十三時二十分、離陸から丁度二時間で目的の空港に着陸。
今度は陸から空を見上げると鈍色の雲に覆われていた。
お金で最短時間を買ったので海路や陸路より遥かに早く
到着できたのだけど、
始発バスに乗ってから到着が午後になるのだから、
これまでのどこよりも遠くの魚に会いにきたのだと思わされた。
いや、まだ水辺ではなくこれから長い長い陸路を経て、
予定では片道十二時間の行程になる。
目的地へ到着するのは陽が西の空に沈んでからになるので下見も
できないはずだ。この季節の北海道は夜明けと日没が早い。
空港で手配していたレンタカー店の送迎車に乗り、
今日から一週間お世話になる車の元へ案内された。
まず驚いたのはリモコンでドアのロックが解除されること、
いや正確にはリモコンのボタンを押さずして、ドアノブに触れたら
開錠される。
さらにイグニッションにキーを差し込むことなく
レーシング・カーよろしくスターターボタンでエンジンに火が入るのには
参った。
パワーウインドウにパワーステアリングまで装備され、
ギアはドライブレンジに入れれば速度に応じて
自動でギアが変速されるAT仕様。
オートブリッパー同様、減速時にヒール&トゥが不要なのは楽である。
驚きっぱなしの僕に概ちゃんが、
これが皆が乗っているごく普通の車だと諭される。
なんやったら乗り心地が良く車内がとっても静かであるとも。
もっとも驚いたのはセンターコンソールに鎮座する
ナビゲーションシステム。しかしこれは無用の長物、
道案内はスマホで十分ではないだろうか、この時代遅れめ。
そんなスマホの充電用に持参していたシガーソケットの変換器だったが、
そもそもシガーソケットなどなく、
USB電源が標準装備されておりこれこそが無用の長物であった。
都会から田舎に来たのに、なにこの浦島太郎感。
贅沢が集約された近未来型自動車に戸惑っていると、
レンタカー店のスタッフがアドバイスをくれた。
店を出てすぐの曲がり角に一時停止線があるのでお気をつけくださいと。
ちなみに全国の最たる交通違反は一時停止違反。
普段から守っていないはずがなく、
もちろん信号のない横断歩道に歩行者がいれば停止する。
サーキットは速いのが正義だが、公道は無事故・無違反が絶対正義であり、
一番格好良い。
アドバイスはありがたいのだけど、
こちらは金色眩い免許証を携帯する超優良ドライバーだ。
サーキットでは1コーナーをオーバーランする常習者でも、
停止線は綺麗に停止するテクニックを持ち合わせている。
初めての道だから一時停止線を見落としがちなのかもしれないが、
優先道路を走る車、特に北海道は速度が高めの車が多く、
その前に飛び出すなんて自殺行為だし、
自分の前に飛び出してくる違反車がいるかもしれない。
違反なんてダサいことをするわけがない・・・・・・と、
その曲がり角に来た時、早速捕まっている『わ』ナンバーを見て、
出オチやんとせせら笑った。
きっと旅行者だろう、
重大事故の当事者になり人殺しする前に捕まって良かったじゃない。
後に秋の全国交通安全運動中だったことを知り、
レンタカー店に戻るまで数々の取締まり対象を目撃することになる。
僕達は違反者を尻目に遥か遠くにある水辺へと、
近未来自動車で陸路を進んだ。
気温にそぐわない厚着をした我々とは反対の、
薄着でさらにはサンダルを履いた人々がいる。
どうやら薄着の人達は沖縄行きの飛行機に乗るらしく、
その誰もが若くて陽気が弾けている。
沖縄に到着するなり海に飛び込むべく、
きっと服の下はもう破廉恥なビキニではないかとも思わされた。
それに対して我々北海道行きの厚着派は、
平均年齢高めでどこか鬱屈としており、
薄着派とは混じることのない明確なサーモクラインが引かれていた。
思わず沖縄もいいな・・・・・・と口から零れてしまうと、
概ちゃんが、
「沖縄にはどんな魚がいるんやろーって考えてる。すぐ魚のことやし」
なんて言い出し、これはご名答。
僕の頭の中では地味な色をしたロウニンアジではなく、
カスミアジのような色鮮やかなお魚ちゃんや、
色取り取りの熱帯魚ちゃんが群れを成し、
白い砂浜に寝転がっていたり、胸を揺らして浅瀬で戯れていた。
これからヒグマが待つ北海道の冷たい水で糸を垂らす奴がいるだなんて、
沖縄へ行く彼女達の誰が想像できよう。
十時五十六分、乗客を待つ旅客機に乗り込み、
指定していた窓際に着座した。
事前に席を予約する際に概ちゃんに抜け駆けしていたので
彼女の席は僕の隣ではなく、通路を挟んだ僕の左斜め後ろだった。
この意味のない微妙な距離感に複雑な想いをした。
十一時二十分、
三ヵ月前に概ちゃんと観に行ったトップガン・マーヴェリックに
登場したスーパーホーネットを彷彿とさせるほどの加速度はなかったが、
大きな機体は宙へ舞い上がり地上に並ぶ建物をみるみる小さくした。
窓の外にあるのはひたすら広がる雲海と濃い青をした空。
地上では体験できない別世界の景色は、
聖帝サウザーの気分にさせるに十分であり、
下界で汗水を垂らしてひっきりなしに働く下々の民に向かい、
東京証券取引所の後場終わり十五時までしっかり経済を回せと、
頬杖を突きながら二時間だけの王座を満喫する。
空の上で正午を跨ぎ、北海道へ向かっている現実が僕に語りかけてくる。
最終目標の魚であるイトウを釣ることができたなら、
僕はなにを感じ今後どう生きるのか。
イトウは難しい魚ではないと想像でき、
イトウが生息できる環境が整っていたならばきっと釣れる。
初魚との出会いは人生で一度きりなのだから、
これまで同様、出会うまでの過程を大切にしよう。
あれこれ想像するうちに、
釣り上げてからのことを考えるのは野暮だと気付いた。
次第に眼下にはまさに航空写真で見る地上が現れ、
陸と海の境となる海岸線が延々と続き、そこを通過すると
今度はどこまでも広がる緑の大地を飛んだ。
機はゆっくり高度を下げるが、
見渡す限り建物がないことに気づき、
本当に日本だろうかと疑いつつ、これが北海道なのだ。
十三時二十分、離陸から丁度二時間で目的の空港に着陸。
今度は陸から空を見上げると鈍色の雲に覆われていた。
お金で最短時間を買ったので海路や陸路より遥かに早く
到着できたのだけど、
始発バスに乗ってから到着が午後になるのだから、
これまでのどこよりも遠くの魚に会いにきたのだと思わされた。
いや、まだ水辺ではなくこれから長い長い陸路を経て、
予定では片道十二時間の行程になる。
目的地へ到着するのは陽が西の空に沈んでからになるので下見も
できないはずだ。この季節の北海道は夜明けと日没が早い。
空港で手配していたレンタカー店の送迎車に乗り、
今日から一週間お世話になる車の元へ案内された。
まず驚いたのはリモコンでドアのロックが解除されること、
いや正確にはリモコンのボタンを押さずして、ドアノブに触れたら
開錠される。
さらにイグニッションにキーを差し込むことなく
レーシング・カーよろしくスターターボタンでエンジンに火が入るのには
参った。
パワーウインドウにパワーステアリングまで装備され、
ギアはドライブレンジに入れれば速度に応じて
自動でギアが変速されるAT仕様。
オートブリッパー同様、減速時にヒール&トゥが不要なのは楽である。
驚きっぱなしの僕に概ちゃんが、
これが皆が乗っているごく普通の車だと諭される。
なんやったら乗り心地が良く車内がとっても静かであるとも。
もっとも驚いたのはセンターコンソールに鎮座する
ナビゲーションシステム。しかしこれは無用の長物、
道案内はスマホで十分ではないだろうか、この時代遅れめ。
そんなスマホの充電用に持参していたシガーソケットの変換器だったが、
そもそもシガーソケットなどなく、
USB電源が標準装備されておりこれこそが無用の長物であった。
都会から田舎に来たのに、なにこの浦島太郎感。
贅沢が集約された近未来型自動車に戸惑っていると、
レンタカー店のスタッフがアドバイスをくれた。
店を出てすぐの曲がり角に一時停止線があるのでお気をつけくださいと。
ちなみに全国の最たる交通違反は一時停止違反。
普段から守っていないはずがなく、
もちろん信号のない横断歩道に歩行者がいれば停止する。
サーキットは速いのが正義だが、公道は無事故・無違反が絶対正義であり、
一番格好良い。
アドバイスはありがたいのだけど、
こちらは金色眩い免許証を携帯する超優良ドライバーだ。
サーキットでは1コーナーをオーバーランする常習者でも、
停止線は綺麗に停止するテクニックを持ち合わせている。
初めての道だから一時停止線を見落としがちなのかもしれないが、
優先道路を走る車、特に北海道は速度が高めの車が多く、
その前に飛び出すなんて自殺行為だし、
自分の前に飛び出してくる違反車がいるかもしれない。
違反なんてダサいことをするわけがない・・・・・・と、
その曲がり角に来た時、早速捕まっている『わ』ナンバーを見て、
出オチやんとせせら笑った。
きっと旅行者だろう、
重大事故の当事者になり人殺しする前に捕まって良かったじゃない。
後に秋の全国交通安全運動中だったことを知り、
レンタカー店に戻るまで数々の取締まり対象を目撃することになる。
僕達は違反者を尻目に遥か遠くにある水辺へと、
近未来自動車で陸路を進んだ。
2024年01月29日
イトウは心に宿る30
25Lの防水バックパックを背負い、
艶消しの黒に塗られたロッドケースを左肩に掛け、
右手でフルサイズのスーツケースを引き、まだ仄暗い街を歩いた。
午前五時二十分、街の片隅で概(おおむね)ちゃんと合流した。
昼間の大通りを堂々と歩けない二人の関係ゆえ人目を忍んだ
静かな出発。街はまだ静寂を保っているが、
概ちゃんが引く中型スーツケースのキャスターがアスファルト表面の
ギャップを拾ってやけに騒がしい。
夢の北海道旅行実現で嬉しいのはわかるが、
結婚式で空き缶を引きずるブライダルカーよろしく、
まだ布団の中で夢を見ている皆様を叩き起こすつもりらしい。
僕のスーツケースと交換し、軽く持ち上げバス停へ向かった。
到着したバス停で始発バスを待つのはまだ二人だけ。
天気は申し分なく早朝の気温も心地良く感じられ、
都会で着るには少々早い革ジャンを脱いだ。
幸い二人は世界の誰ともウイルス繋がりがなく今日まで来られたが、
COVID-19に二度三度と感染して命拾いした者もいれば、数人は鬼籍に入った。
自分に深く関わりのある者達はいまだ感染していないが、
知り合いに陽性反応が出るたび忍び寄る黒い影を実感し、
自分の責任で愛する者の命を奪いたくないと常に考えてきた。
ここから北海道までの行程で避けて通れないのが公共交通機関であり、
人口の多い都市部から僻遠の地へウイルスを持ち込みたくない
との思いは強い。
しかしながらいつも通りの意識を持ち行動すれば問題ないはず。
バス停にはちらほら乗客が集まってきたが、
誰もがマスクをして適正と思われる距離を保ち列を作った。
バスから電車に乗換え、駅で停車するたび乗客が増える。
そのほとんどが通勤および通学での利用客だろうか。
中には通院する方や、初孫に会いに行くご婦人に、
緊張の面持ちで会社の面接に臨む人だっているかもしれない。
きっと想像もできない事情を抱えた人だっている。
社会に生きる皆が車両に揺れている。
乗換え駅を降り、別の路線へ向かう通路はいわゆる朝のラッシュ。
決して広いとはいえない通路を人々が行き交い、
その群衆の中にロッドケースを傍らにする自分が異質であることを
認識していた。と同時に遊びに行く気持ちの余裕、優越感。
邪魔にならないよう流芯を外れた隅っこに寄り、
足早にする人々を見送ってから、また二人で歩きだした。
次に乗車した路線では駅ごとに乗客が減り、
車内に空間が広がりマスク越しに会話も許されるであろうほどになる。
僕達は荷物が大きいので座席を利用せずドアの側に立っていたのだが、
ドア側に立つ概ちゃんの前に立ちはだかり、触っていいか尋ねてみた。
痴漢の許可を求める人なんていないと概ちゃんは言う。
では遠慮なくと言うと、声を出すと睨む。
公然で妙な声を出すなんて概ちゃんそこは堪え忍ばないと。
道ですれ違うGG共が思わず振り向く光景も珍しくないスタイルの
概ちゃんを、あんなことやこんなことだって
好き放題できる優越感。でも電車でするのは公然わいせつ。
目的の駅に到着し電車を降りると、
後ろからご夫婦らしき二人も降りてきて、
奥様もしくは愛人かも知れない女性が除菌シートを一枚取出し、
パートナーの男性に手渡す姿がとてもスマートで感心した。
きっとこの意識が二人を感染とは縁遠いものにしているのだろう。
仲睦まじきは美しい。
八時五十分空港到着。
ご時世だろうか搭乗手続きは簡素の一言に尽きる。
久しぶりで不慣れな自分達でも呆気なく手続きを終えることができ、
しばし広々としたロビーで寛ぐ。
僕は思い出したようにカメラを取出し撮影準備に取り掛かった。
被写体は全米が濡れたGカップの概ちゃん。
ポートレート撮影は狙った表情を引き出すのに
会話を巧みに行う手腕も問われるため、
先ほどターミナルへ来るのに利用したシャトルバスで見た、
大きな広角レンズのキヤノンを首に掛けた男性と、
その彼女と思しき女性が目をキラキラさせておしゃべりしていた
様子を切り出した。
すると予想だにしなかった驚きの答えが返ってきた。
概ちゃんも一瞬男性と思ったらしいが、間違いなく女性だったよと。
な・・・・・・なんだってーー!
週刊少年マガジンだったかのMMR調査班よろしく驚愕の事実。
別に野郎だろうが女性だろうが僕に損益はないし
地球だって滅亡はしないのだけど、
LGBTQの時代であることを再認識し、
そしてラブラブな瞳になっていた女性が実は男性で、
つまりは男女のカップルで帳尻合わせになっているのではと
猜疑心が芽生えもした。
結果カメラを持つ自分の表情が様々に変化していた。
これまで僕達は、散歩中に上空の飛行機を見つけては
どこへ向かうのだろうなんて言っていた。
今度は僕達がその飛行機に搭乗して空高く舞い上がる。
フライト時間が迫り指定された搭乗口へ向かうと、
後から続々と集まる人々の姿を見て驚いた。
ちょっと、この人達って・・・・・・。
2024年01月18日
イトウは心に宿る29
たわわに実る果実を胸にもつ概(おおむね)ちゃんは、
はっきり言って魚釣りに理解がない。
休日は晴天予報だからのんびり魚釣りでもしようかという
提案のもとでレジャーフィッシングを楽しむならいざ知らず、
雨に打たれながら糸を垂らすだの、
増水が落ち着いたから緊急発進するだの、
凍てつく夜に水辺に立ったり、
仕事帰りが丁度時合いだから水辺でちょいとひと投げ・・・・・・
なんてことは許されない。
許可なくそのようなことが露見してしまえば、
ペッパーミル・パフォーマンスよろしく
圧縮袋が真空状態にされるが如しのお仕置きが待っている。
ただ、ちょっと頭がよろしくない釣人は経験上釣れるタイミングを
把握しており、同時に釣れない状況も知っているため、
休日だから魚釣りをするなどという生温いスタイルでは目的の魚を
釣り上げられない。
さらに同じ釣人でも理解されないかもしれないが、
僕と同じ領域に生きる釣人は、魚釣りという手段で魚の動きを知るので、
釣れないのを確認するための釣りもする。
釣れないことで、やっぱり産卵の為に移動する季節だなと納得し満足する。
明日仕事だろうが晩御飯を後回しにしようが、
濡れようが凍えようが優先すべき事柄はまず水辺に立ち投げること。
ちなみに僕の知っている鱸釣師も、
「この風、この肌触りこそ鱸釣りよ!!」といって
スクランブルされている。
もっともそのような気が触れたようなスタイルを一般人に説明を
試みようとも理解に苦しまれるのは明白であり、
しかしながら粘り強く説得を続けるのだけれど、
これを逃すと後悔するから行かせてほしいと力説するその口元が
綻んでいるらしく、その顔が憎たらしいと両の手で頬を掴まれる。
世の中には私と仕事どちらが大切なのかと問うてくる
非常に面倒な女性が実在するそうだが、
概ちゃんはそんな低次元な発言はしない。
魚釣りへの理解は乏しくも、僕の切実な気持ちを汲んでくれる。
ある時二人でお出掛けした帰りにまたとない気象条件だったので、
ちょっとだけ投げてくると僕だけ水辺へ向かい、
二投目で久しぶりに自己記録を更新する琵琶湖大鯰を釣り、
魚と一緒に撮影してもらいたく車中で待つ概ちゃんに
連絡をすると、暴風雨だったため拒否されたのだけど。
そもそも僕は異性のパートナーと共に魚釣りを楽しもうとの
考えを持ち合わせていない。
生きた魚を笑顔で掴める女性というのがどうも苦手で、
釣具屋でワームを吟味する姿より、コスメを選ぶ女性の姿が好きだ。
批判を覚悟で申し上げるならば、
釣りガールという人種より、
生きた魚を触ろうとしたら急に動いて小さな悲鳴を上げると同時に
出した手を引っ込める女性が好みだ。
カムルチーを愛でる僕と、いやーと腰が引けてる概ちゃん。
こういうのでいい。
そういったところで北海道へ釣具を持参するのは僕だけであり、
概ちゃんのスーツケースには衣類と生地面積の小さな下着だけなので、
スーツケースのもう片側には圧縮されたシュラフが鎮座した。
スーツケースに荷物を収めたなら、
ヘルスメーターに乗せて重量の最終確認をする。
ふんだんに釣具が収まる遊びに特化されたスーツケースは
航空会社が定めた規定重量まで僅かというところまで迫っていた。
これはお見事という他ないと喜び安堵していたのも束の間、
帰路のお土産の分がすっかり抜けていると概ちゃんに指摘される。
なるほど、
学生時代から夏休みの宿題は計画的かつ余裕を持って終え、
アルバイトで得たお金は使い切らず貯金し、
朝は時間を逆算して余裕をもって起床する優等生タイプの概ちゃん。
夏休みが終わっても宿題を提出する授業はまだ先なので大丈夫だの、
これまで借金こそしたことはないがアルバイトのお金は
ガソリン代に化け、
起床は朝食の時間を食い潰してでも布団の中で
形を失ったスライムのようになっていたい僕にはお土産概念など毛頭なかった。
ほんまそういうところ!と呆れ返られようが
釣具を死守せねばならず、
さらに僕の手荷物分はミラーレス一眼とレンズで
目一杯だったので、
お土産は概ちゃんの手荷物分に任せることにした。
僕は旅立ちの日まで毎日を楽しんできた。
幸い南海トラフ大地震で大地が揺らされることなく、
出発日を迎えることになる。
はっきり言って魚釣りに理解がない。
休日は晴天予報だからのんびり魚釣りでもしようかという
提案のもとでレジャーフィッシングを楽しむならいざ知らず、
雨に打たれながら糸を垂らすだの、
増水が落ち着いたから緊急発進するだの、
凍てつく夜に水辺に立ったり、
仕事帰りが丁度時合いだから水辺でちょいとひと投げ・・・・・・
なんてことは許されない。
許可なくそのようなことが露見してしまえば、
ペッパーミル・パフォーマンスよろしく
圧縮袋が真空状態にされるが如しのお仕置きが待っている。
ただ、ちょっと頭がよろしくない釣人は経験上釣れるタイミングを
把握しており、同時に釣れない状況も知っているため、
休日だから魚釣りをするなどという生温いスタイルでは目的の魚を
釣り上げられない。
さらに同じ釣人でも理解されないかもしれないが、
僕と同じ領域に生きる釣人は、魚釣りという手段で魚の動きを知るので、
釣れないのを確認するための釣りもする。
釣れないことで、やっぱり産卵の為に移動する季節だなと納得し満足する。
明日仕事だろうが晩御飯を後回しにしようが、
濡れようが凍えようが優先すべき事柄はまず水辺に立ち投げること。
ちなみに僕の知っている鱸釣師も、
「この風、この肌触りこそ鱸釣りよ!!」といって
スクランブルされている。
もっともそのような気が触れたようなスタイルを一般人に説明を
試みようとも理解に苦しまれるのは明白であり、
しかしながら粘り強く説得を続けるのだけれど、
これを逃すと後悔するから行かせてほしいと力説するその口元が
綻んでいるらしく、その顔が憎たらしいと両の手で頬を掴まれる。
世の中には私と仕事どちらが大切なのかと問うてくる
非常に面倒な女性が実在するそうだが、
概ちゃんはそんな低次元な発言はしない。
魚釣りへの理解は乏しくも、僕の切実な気持ちを汲んでくれる。
ある時二人でお出掛けした帰りにまたとない気象条件だったので、
ちょっとだけ投げてくると僕だけ水辺へ向かい、
二投目で久しぶりに自己記録を更新する琵琶湖大鯰を釣り、
魚と一緒に撮影してもらいたく車中で待つ概ちゃんに
連絡をすると、暴風雨だったため拒否されたのだけど。
そもそも僕は異性のパートナーと共に魚釣りを楽しもうとの
考えを持ち合わせていない。
生きた魚を笑顔で掴める女性というのがどうも苦手で、
釣具屋でワームを吟味する姿より、コスメを選ぶ女性の姿が好きだ。
批判を覚悟で申し上げるならば、
釣りガールという人種より、
生きた魚を触ろうとしたら急に動いて小さな悲鳴を上げると同時に
出した手を引っ込める女性が好みだ。
カムルチーを愛でる僕と、いやーと腰が引けてる概ちゃん。
こういうのでいい。
そういったところで北海道へ釣具を持参するのは僕だけであり、
概ちゃんのスーツケースには衣類と生地面積の小さな下着だけなので、
スーツケースのもう片側には圧縮されたシュラフが鎮座した。
スーツケースに荷物を収めたなら、
ヘルスメーターに乗せて重量の最終確認をする。
ふんだんに釣具が収まる遊びに特化されたスーツケースは
航空会社が定めた規定重量まで僅かというところまで迫っていた。
これはお見事という他ないと喜び安堵していたのも束の間、
帰路のお土産の分がすっかり抜けていると概ちゃんに指摘される。
なるほど、
学生時代から夏休みの宿題は計画的かつ余裕を持って終え、
アルバイトで得たお金は使い切らず貯金し、
朝は時間を逆算して余裕をもって起床する優等生タイプの概ちゃん。
夏休みが終わっても宿題を提出する授業はまだ先なので大丈夫だの、
これまで借金こそしたことはないがアルバイトのお金は
ガソリン代に化け、
起床は朝食の時間を食い潰してでも布団の中で
形を失ったスライムのようになっていたい僕にはお土産概念など毛頭なかった。
ほんまそういうところ!と呆れ返られようが
釣具を死守せねばならず、
さらに僕の手荷物分はミラーレス一眼とレンズで
目一杯だったので、
お土産は概ちゃんの手荷物分に任せることにした。
僕は旅立ちの日まで毎日を楽しんできた。
幸い南海トラフ大地震で大地が揺らされることなく、
出発日を迎えることになる。
2024年01月06日
イトウは心に宿る28
書籍や映像で旅をテーマにした魚釣りを目にしてきた。
ある釣人はスタッフを連れて海外へ飛んだ。
またある釣人は釣り仲間と共に魚を求めた。
単独で彼の地へ赴いた釣人は現地ガイドを頼りにした。
さらにストイックな釣人は単独で挑んだ。
楽しみ方は釣人の数だけあり、どれも素晴らしく憧れた。
だが僕の釣旅はそのどれでもなく、
少なくともこれまで見聞きしたことがないスタイル。
僕は異性を連れての釣旅を計画した。
いや、正確には引っ付いてきたと言うべきか。
念願の北海道釣行を実行すべく、
フライト・スケジュールを彼女に伝えると、
しばらくおいてから同じ機を予約したことが返信されてきた。
残り席が僅かだったのに椅子取りゲームよろしく滑り込んできたが、
急な大型連休をよく取得できたものだ。
旅先で魚釣りを楽しみ女性も楽しむ、いや、
女性と楽しみ、暇潰しで魚釣りを楽しむ。
初めて出会う景色の中で、
あの子とあんなことやこんなことができるなんて、
あぁなんと素晴らしいことだ。
北の大地の気温が上昇し、タンチョウが舞い上がり
ヒグマも発情する。
独り釣旅のなんと寂しいことか、
野郎と一緒に行く釣旅はさぞむさ苦しいことだろう。
例え旅費の全てを肩代わりしてもらえるとしてもその選択はない。
孤独の時間を楽しむソロキャンパーだって本当は異性を欲しているに違いなく、
美女が炊事場へ向かう姿を目で追ってしまう性を隠しきれていないし、
ソロキャンガールが孤独を埋めるようにSNSで発信して同情を誘っている。
心の奥底では抜群に相性が良い相手を求めているんでしょう?
孤独のグルメより二人でグルメ。異論は認めない。
異性と行く釣旅という心地よい響きを前に、
SNSで釣りガールに痛いコメントをしているGG共は
ハンケチを噛んで悔しがり、
女日照りが続く野郎共には垂涎の的に違いない。
こんなことを心に思っても口に出したり、
ましてやネットで書いてしまえば敵が増えてしまうので、
他所で話すことはご法度だ。
そもそも全世界の人々を敵に回そうとも、
同性の親友だの友人だのそんなものにも興味はなく、
愛する異性が一人側にいてくれればいい。
できることなら胸の大きな方が
より好ましいというのも付け加えたい。
僕は超然とした態度で荷造りに取り掛かる。
スーツケースに荷物を収納するいわゆるパッキングでは
困難を極めた。
嵩張る荷物の最たるものはウェーダーとシュラフだ。
向かう先の気温の幅広さにも困惑。
日中は夏日、朝夕は冷蔵庫の中、
もちろん夜間はストーブなしに過ごすことはできない。
半袖からジャケットまでを用意せねばならずこれらも嵩張る。
圧縮袋なるものを入手して衣類を詰める。
袋の上から体重を乗せて空気を外へ追いやり真空状態へもっていく。
なかなか便利なアイテムだと感心していると、
横から旅の同行者である概(おおむね)ちゃんが全然甘いと物申す。
これ以上は出ないと反論するも、まだ残っているからと概ちゃんは引かない。
もういいからと拒否したものの、不敵な笑みを浮かべて袋を奪われた。
概ちゃんの手から無理矢理空気が絞り出されて行く様が
あの苦しい時間と重なり、腰が引けて目を背けたくなる。
もうやめてという叫びは火に注ぐ油でしかない。
ほらまだ出るじゃないと得意げに絞り出し、
全て出し切り膨らみがなくなった袋を見て僕は震えあがった。
ある釣人はスタッフを連れて海外へ飛んだ。
またある釣人は釣り仲間と共に魚を求めた。
単独で彼の地へ赴いた釣人は現地ガイドを頼りにした。
さらにストイックな釣人は単独で挑んだ。
楽しみ方は釣人の数だけあり、どれも素晴らしく憧れた。
だが僕の釣旅はそのどれでもなく、
少なくともこれまで見聞きしたことがないスタイル。
僕は異性を連れての釣旅を計画した。
いや、正確には引っ付いてきたと言うべきか。
念願の北海道釣行を実行すべく、
フライト・スケジュールを彼女に伝えると、
しばらくおいてから同じ機を予約したことが返信されてきた。
残り席が僅かだったのに椅子取りゲームよろしく滑り込んできたが、
急な大型連休をよく取得できたものだ。
旅先で魚釣りを楽しみ女性も楽しむ、いや、
女性と楽しみ、暇潰しで魚釣りを楽しむ。
初めて出会う景色の中で、
あの子とあんなことやこんなことができるなんて、
あぁなんと素晴らしいことだ。
北の大地の気温が上昇し、タンチョウが舞い上がり
ヒグマも発情する。
独り釣旅のなんと寂しいことか、
野郎と一緒に行く釣旅はさぞむさ苦しいことだろう。
例え旅費の全てを肩代わりしてもらえるとしてもその選択はない。
孤独の時間を楽しむソロキャンパーだって本当は異性を欲しているに違いなく、
美女が炊事場へ向かう姿を目で追ってしまう性を隠しきれていないし、
ソロキャンガールが孤独を埋めるようにSNSで発信して同情を誘っている。
心の奥底では抜群に相性が良い相手を求めているんでしょう?
孤独のグルメより二人でグルメ。異論は認めない。
異性と行く釣旅という心地よい響きを前に、
SNSで釣りガールに痛いコメントをしているGG共は
ハンケチを噛んで悔しがり、
女日照りが続く野郎共には垂涎の的に違いない。
こんなことを心に思っても口に出したり、
ましてやネットで書いてしまえば敵が増えてしまうので、
他所で話すことはご法度だ。
そもそも全世界の人々を敵に回そうとも、
同性の親友だの友人だのそんなものにも興味はなく、
愛する異性が一人側にいてくれればいい。
できることなら胸の大きな方が
より好ましいというのも付け加えたい。
僕は超然とした態度で荷造りに取り掛かる。
スーツケースに荷物を収納するいわゆるパッキングでは
困難を極めた。
嵩張る荷物の最たるものはウェーダーとシュラフだ。
向かう先の気温の幅広さにも困惑。
日中は夏日、朝夕は冷蔵庫の中、
もちろん夜間はストーブなしに過ごすことはできない。
半袖からジャケットまでを用意せねばならずこれらも嵩張る。
圧縮袋なるものを入手して衣類を詰める。
袋の上から体重を乗せて空気を外へ追いやり真空状態へもっていく。
なかなか便利なアイテムだと感心していると、
横から旅の同行者である概(おおむね)ちゃんが全然甘いと物申す。
これ以上は出ないと反論するも、まだ残っているからと概ちゃんは引かない。
もういいからと拒否したものの、不敵な笑みを浮かべて袋を奪われた。
概ちゃんの手から無理矢理空気が絞り出されて行く様が
あの苦しい時間と重なり、腰が引けて目を背けたくなる。
もうやめてという叫びは火に注ぐ油でしかない。
ほらまだ出るじゃないと得意げに絞り出し、
全て出し切り膨らみがなくなった袋を見て僕は震えあがった。
2024年01月02日
イトウは心に宿る27
釣具の準備をほぼ終え、あとはヒグマ対策の
武器類が飛行機に持込めるのかを調べると、
預け荷物ならばナイフは可能であった。
携行する武器の第一候補はGERBER。
湿原の中でヒグマがこうきたらこう、
もしくはこうしてきたらこう、
対峙するのがoso18だろうが死角なし。
このGERBERは魚釣りを通して知り合った釣友からの
いただきもの。
僕と同じくwhiplash factoryを好む、
ローディーラー使いであり、サーペントラインジング使い。
もちろん色々な魚種を楽しむし、昨今のキャンプブームより前から
バイクに乗ってソロキャンプをする、
楽しさの刺激を与えてくれる存在だ。
魚釣りでお手合わせをしたとき、
初めての挑戦なのに僕より先にルアーで
オヤニラミを釣り上げたことがあり、ひれ伏すしかなかった。
ある初冬の田園地帯では自作の小型ストーブでお湯を沸かして
コーヒーを淹れてくださったことを思い出す。
まだ野鳥に興味がなかった頃、
早春の海でクロダイ・スズキ釣りをしていると、
上空を飛ぶミサゴとトビの見分け方を教えてくれた。
それにカムルチー・ナマズ・カネヒラ・ヤリタナゴ・アブラボテ・
ヌマムツ・オイカワ・オオクチバスetc...一緒に色々楽しんだ。
後に聞いた話では僕と同じく辛い時期を過ごしたそうで、
その気持ちが痛いほどわかったし、
頑張ったから暗いトンネルを抜けると楽しい時間が待っていた。
寡黙で優しい心の持ち主であるその釣友がGERBERと一緒に、
五円玉の穴にコードを通して結んだものを手渡してくださった。
ナイフなので御縁が切れないようにとのことだった。
こういった相手の気持ちに寄り添える繊細な気遣いが素晴らしく、
雑を生きる僕と大違いだ。
一本のGERBERが湿原に入る僕に勇気をくれた。
余談だが、そんなお気に入りのGERBERが作られている工場を調べると、
なんとサツキマスを狙っている近所だったことを知り、
いわゆる聖地巡礼的にG.SAKAI(ガーバー・サカイ)を訪れたことがある。
そしてもうひとつ、シュマグもいただいた。
アラブスカーフとも呼ばれる広くて厚手のバンダナのような布で、
いまでも渓流へ入る時や連泊釣行には必ず携え、
山での野鳥撮影にもブラインドや防寒で重宝している。
ミリタリーグッズが好きだけど、なかなか手を出せずにいた
僕には最高の贈り物達。
そうそう、託されたライヴワイアのフラッシング・イーヴルカラーも忘れずに。
武器類が飛行機に持込めるのかを調べると、
預け荷物ならばナイフは可能であった。
携行する武器の第一候補はGERBER。
湿原の中でヒグマがこうきたらこう、
もしくはこうしてきたらこう、
対峙するのがoso18だろうが死角なし。
このGERBERは魚釣りを通して知り合った釣友からの
いただきもの。
僕と同じくwhiplash factoryを好む、
ローディーラー使いであり、サーペントラインジング使い。
もちろん色々な魚種を楽しむし、昨今のキャンプブームより前から
バイクに乗ってソロキャンプをする、
楽しさの刺激を与えてくれる存在だ。
魚釣りでお手合わせをしたとき、
初めての挑戦なのに僕より先にルアーで
オヤニラミを釣り上げたことがあり、ひれ伏すしかなかった。
ある初冬の田園地帯では自作の小型ストーブでお湯を沸かして
コーヒーを淹れてくださったことを思い出す。
まだ野鳥に興味がなかった頃、
早春の海でクロダイ・スズキ釣りをしていると、
上空を飛ぶミサゴとトビの見分け方を教えてくれた。
それにカムルチー・ナマズ・カネヒラ・ヤリタナゴ・アブラボテ・
ヌマムツ・オイカワ・オオクチバスetc...一緒に色々楽しんだ。
後に聞いた話では僕と同じく辛い時期を過ごしたそうで、
その気持ちが痛いほどわかったし、
頑張ったから暗いトンネルを抜けると楽しい時間が待っていた。
寡黙で優しい心の持ち主であるその釣友がGERBERと一緒に、
五円玉の穴にコードを通して結んだものを手渡してくださった。
ナイフなので御縁が切れないようにとのことだった。
こういった相手の気持ちに寄り添える繊細な気遣いが素晴らしく、
雑を生きる僕と大違いだ。
一本のGERBERが湿原に入る僕に勇気をくれた。
余談だが、そんなお気に入りのGERBERが作られている工場を調べると、
なんとサツキマスを狙っている近所だったことを知り、
いわゆる聖地巡礼的にG.SAKAI(ガーバー・サカイ)を訪れたことがある。
そしてもうひとつ、シュマグもいただいた。
アラブスカーフとも呼ばれる広くて厚手のバンダナのような布で、
いまでも渓流へ入る時や連泊釣行には必ず携え、
山での野鳥撮影にもブラインドや防寒で重宝している。
ミリタリーグッズが好きだけど、なかなか手を出せずにいた
僕には最高の贈り物達。
そうそう、託されたライヴワイアのフラッシング・イーヴルカラーも忘れずに。
2023年12月31日
イトウは心に宿る26
投げる喰わせるの道具は準備万端整ったが、
魚を取込む準備を忘れてはならない。
向かう大地は鮭鱒天国なので、魚の取込みの際に使用するのが
フィッシュグリップでは機能的に不向きな気もするし、なにより味気なさを感じた。
やはり鮭鱒にはランディングネットが合う。
なにより僕には伝家の宝刀と呼ぶに相応しいランディングネットがあり、
それは縁あって知り合った釣友の手により作られた竹製のランディングネット。
ご友人の土地に自生する竹を切るところから始まり、
数年乾燥させたのちに生み出されるハンドメイドは、
当時年に一本しか製作されなかった魂の作品である。
製作するにあたり狙う場所の特徴と魚の大きさをお伝えし、
グリップの長さは僕の釣りスタイルを汲み取っていただいた
ショートグリップ。
そして指の寸法から導き出されたグリップ部の太さゆえ、
手に馴染まないはずがない。
この竹ランディングネットは本流のサクラマスを想定していたが、
将来的にイトウという目標を収めることにもなると大口を叩いた。
また、この本流鱒向けランディングネットだけに留まらず、
厚かましくも源流釣行向けの竹ランディングネットも作っていただいた。
こちらも北海道水系のみに生息する、
イトウとは別の憧れの魚を掬い上げることを夢見ていた。
どちらのランディングネットも竹特有の美しさと材質感を上手く表現した芸術作品。
ランディングネットを握り舐め回すような視線を送ると、
グリップは竹を切り出した数個のブロックが連なって形成されているのだけど、
その連なりがH.R.ギーガーの世界観を思わせ興奮を覚える。
続けて、厚めに塗られたクリアコーティングの艶に甘いため息が漏れ、
フレームにはアクセントの炙った焼き色が入り、僕の心に止めを刺してくる。
フレーム外側に切られたスリットや細いドリル穴、
フレームを固定している釘穴隠しも素晴らしい出来栄えで、
どうすればこんな繊細な作業ができるのだろうと、
物作りにおける職人技が光る。
網となる紐の色は、釣果撮影をした際に主役の魚が美しくなるような色合いで、
その一本の紐が途方もない時間を掛けて編まれて網となる。
この大変な編み工程を、傍観者がたった一行で説明したことに
胸が張り裂けそうになる。
全ての工程において、製作者のお人柄がわかる丁寧な造り。
芸術品といっても過言ではない美しさに加え、耐久性も兼ね備える。
それなのに万が一不具合があれば手直しをしてくださるという生涯保証付き。
使って幸せ、所有する幸せ、心より感謝する逸品。
部屋の壁に飾ってある二つの竹ランディングネットを手に取り、
二つを重ねてフルサイズのスーツケースへと。
あ、本流用が大きくて入らない・・・・・・?
ならばスーツケースの対角線ならどうだと恐る恐る合わせてみると、
製作時に計算されたかのような寸分違わぬ収まり方。
すごい、グリップがあと数ミリ長ければ入らなかった。
先に述べたグリップ長は僕の釣りスタイルを考慮してくださったというのが
ショートグリップ形状であり、
絶対にイトウ釣りにお供させるという製作者の気持ちが
こういった形で表れたように思え、頬が緩んでちょっと声を出して
笑ったし、再び製作者へ感謝の気持ちが湧いてきた。
魚を取込む準備を忘れてはならない。
向かう大地は鮭鱒天国なので、魚の取込みの際に使用するのが
フィッシュグリップでは機能的に不向きな気もするし、なにより味気なさを感じた。
やはり鮭鱒にはランディングネットが合う。
なにより僕には伝家の宝刀と呼ぶに相応しいランディングネットがあり、
それは縁あって知り合った釣友の手により作られた竹製のランディングネット。
ご友人の土地に自生する竹を切るところから始まり、
数年乾燥させたのちに生み出されるハンドメイドは、
当時年に一本しか製作されなかった魂の作品である。
製作するにあたり狙う場所の特徴と魚の大きさをお伝えし、
グリップの長さは僕の釣りスタイルを汲み取っていただいた
ショートグリップ。
そして指の寸法から導き出されたグリップ部の太さゆえ、
手に馴染まないはずがない。
この竹ランディングネットは本流のサクラマスを想定していたが、
将来的にイトウという目標を収めることにもなると大口を叩いた。
また、この本流鱒向けランディングネットだけに留まらず、
厚かましくも源流釣行向けの竹ランディングネットも作っていただいた。
こちらも北海道水系のみに生息する、
イトウとは別の憧れの魚を掬い上げることを夢見ていた。
どちらのランディングネットも竹特有の美しさと材質感を上手く表現した芸術作品。
ランディングネットを握り舐め回すような視線を送ると、
グリップは竹を切り出した数個のブロックが連なって形成されているのだけど、
その連なりがH.R.ギーガーの世界観を思わせ興奮を覚える。
続けて、厚めに塗られたクリアコーティングの艶に甘いため息が漏れ、
フレームにはアクセントの炙った焼き色が入り、僕の心に止めを刺してくる。
フレーム外側に切られたスリットや細いドリル穴、
フレームを固定している釘穴隠しも素晴らしい出来栄えで、
どうすればこんな繊細な作業ができるのだろうと、
物作りにおける職人技が光る。
網となる紐の色は、釣果撮影をした際に主役の魚が美しくなるような色合いで、
その一本の紐が途方もない時間を掛けて編まれて網となる。
この大変な編み工程を、傍観者がたった一行で説明したことに
胸が張り裂けそうになる。
全ての工程において、製作者のお人柄がわかる丁寧な造り。
芸術品といっても過言ではない美しさに加え、耐久性も兼ね備える。
それなのに万が一不具合があれば手直しをしてくださるという生涯保証付き。
使って幸せ、所有する幸せ、心より感謝する逸品。
部屋の壁に飾ってある二つの竹ランディングネットを手に取り、
二つを重ねてフルサイズのスーツケースへと。
あ、本流用が大きくて入らない・・・・・・?
ならばスーツケースの対角線ならどうだと恐る恐る合わせてみると、
製作時に計算されたかのような寸分違わぬ収まり方。
すごい、グリップがあと数ミリ長ければ入らなかった。
先に述べたグリップ長は僕の釣りスタイルを考慮してくださったというのが
ショートグリップ形状であり、
絶対にイトウ釣りにお供させるという製作者の気持ちが
こういった形で表れたように思え、頬が緩んでちょっと声を出して
笑ったし、再び製作者へ感謝の気持ちが湧いてきた。
2023年12月30日
イトウは心に宿る25
北海道旅行の準備を着々と進める。
携えるロッドは航空会社の受託荷物ルールに則った寸法で決まる。
あらゆるパワーとレングスのロッドを持って行けるならば
頭を悩ませることもないのだが、
厳しい制限の中で望ましいロッドを自ら決断する。
幸いなことに愛用する釣具ブランドのwhiplash factoryは、
長年に渡り徐々にバイクや航空手段において柔軟に対応できる
スペックを備えたルアーロッドがカタログに並ぶようになったのだが、
これは海外逃避行と称したwhiplash factory代表の
スタイルによるものである。
それにより深謀遠慮で入手していた
ベイトロッドとスピニングロッドがある。
ローディーラーはエクストリームエディションの
REX601HX-G [The Outrageos]アウトレイジャスと、
スピニングモデルの
R611RL-S2[The Misdemeanor ST]ミスディミーナーSTだ。
後者のミスディミーナーに関しては、
購入したのち振って曲げて調子を確認してほくそ笑むことをしたのみで、
実戦で使用することなくその日が訪れるまで眠らせていた。
自分の右腕のように扱えるタックルで挑むのではなく、
初の釣魚を北海道の魚類にしようという企みが口元を綻ばせた。
これら二本を選出したのちロッドケースの製作が始まる。
材質はホームセンターで購入できる塩ビパイプにし、
ロッド二本と小物類を押し込めるよう受託荷物サイズ目一杯に
設計した。
のちにマットブラックの缶スプレーで全塗装し、
肩に掛けられるよう適当なベルトをインシュロックで留め、
最後にwhiplash factoryのステッカーを貼って完成。
台湾へ行った時のロッドケースはオリーブドラブを塗装したが、
今回のマットブラックは一段と厳つい。
アウトレイジャスに乗せるリールは当然の如く
ミリオネア・ブラックシープ250。
世界に存在するリールを隈なく眺めたこともないくせに、
世界一格好良いと自慢するベイトリールだ。
ヘッドハンターSRV#6及びナイロンライン20ポンドを巻いた
二機を用意し、状況に応じて換装する。
サーキットのコンディションに応じて
エンジンを乗せ換えるようでいいね。
ミスディミーナーSTにはルビアスLT2500-XHに
YGKエックスブレイド アップグレードX8 #1.2を巻き、
リーダーはナイロン25ポンドと10ポンドの二種類を用意して
対象魚に応じて使い分ける。
メインラインで常用しているPE#1.2という太さだけど、
本来は#1でいいと思いつつ、保険を掛けて#1.2にしている。
かといって#1.5ではストレスになるので、
この#1.2という絶妙な太さ強さが大変安心感を与えてくれてよろしい。
PEラインとリーダーの結束はFGノット。
数種類のノットが存在するが、
キャスティングという釣法において導き出した答えのひとつ。
さらにリーダーとスナップの結束はクリンチノット改。
ここをさらに強いダブルクリンチノットにすると、
根掛かり等でFGノットが負けてしまい、
自然の中に余分なゴミを残すことになる。
よって逃げを設けることも必要だと考えた結果である。
スピニングタックルにPEラインを使用するようになってまだ
日は浅く若輩者だが、2005年から数社のPEラインを吟味して
落ち着いたのがYGK製のPEライン。
ウルトラキャストマンにウルトラジグマンを含め、
YGK製が最も自分のスタイルに合致した。
他に東レにサンラインにユニチカも良品であったが、
新興や安かろう悪かろうの首を傾げたくなる
ラインメーカーの存在をここで列挙することはやめておこう。
週末アングラーとは一線を画した、
年間約百日のヘヴィユーザーでもあったので、
PEラインのインプレッションには自信がある。
思い出の魚を喰わせたルアーは数あれど、
あの魚もあの窮地に立たされた時も、
実はYGKのラインが裏切らなかったことによるのだから賞賛に値する。
もし誰かがPEラインに迷っていたならば、
YGKにしなさいとドンと背中を押す。
さらにメイドイン鳴門市というのにも好感が持て、
それは近年だろうか近畿地方の天気予報になぜか徳島県が入るようになり、
なんでやねん、とか、なんで徳島、という声も聞かれるが、
そのおかげで四国徳島が身近に感じられるようになった。
大阪駅前の梅田新歩道橋を歩いている時に、
突然ABCの女性リポーターに「徳島県といえば!?」とマイクを差し出されたら、
怯むことなくウインクひとつ声高にYGKと答えよう。
そしてYGK製造工場を見学できるならば、出来立てほやほやのPEラインに
全身をぐるぐる巻きにされて恍惚の表情を浮かべたいとさえ思っている。
余談になるが初めてのPEラインはうろ覚えだけど、
90年代後半頃だったかの雷強というライギョ釣りに特化したラインだった。
ヘヴィカバー代表のハスエリアで喰わせたカムルチーを、
リールが破壊しロッドが破損しようとも必ず
ランディングできるという安心感があった。
掛けたイトウを確実に手中におさめねばならぬ使命を、
アップグレードX8に課した。
携えるロッドは航空会社の受託荷物ルールに則った寸法で決まる。
あらゆるパワーとレングスのロッドを持って行けるならば
頭を悩ませることもないのだが、
厳しい制限の中で望ましいロッドを自ら決断する。
幸いなことに愛用する釣具ブランドのwhiplash factoryは、
長年に渡り徐々にバイクや航空手段において柔軟に対応できる
スペックを備えたルアーロッドがカタログに並ぶようになったのだが、
これは海外逃避行と称したwhiplash factory代表の
スタイルによるものである。
それにより深謀遠慮で入手していた
ベイトロッドとスピニングロッドがある。
ローディーラーはエクストリームエディションの
REX601HX-G [The Outrageos]アウトレイジャスと、
スピニングモデルの
R611RL-S2[The Misdemeanor ST]ミスディミーナーSTだ。
後者のミスディミーナーに関しては、
購入したのち振って曲げて調子を確認してほくそ笑むことをしたのみで、
実戦で使用することなくその日が訪れるまで眠らせていた。
自分の右腕のように扱えるタックルで挑むのではなく、
初の釣魚を北海道の魚類にしようという企みが口元を綻ばせた。
これら二本を選出したのちロッドケースの製作が始まる。
材質はホームセンターで購入できる塩ビパイプにし、
ロッド二本と小物類を押し込めるよう受託荷物サイズ目一杯に
設計した。
のちにマットブラックの缶スプレーで全塗装し、
肩に掛けられるよう適当なベルトをインシュロックで留め、
最後にwhiplash factoryのステッカーを貼って完成。
台湾へ行った時のロッドケースはオリーブドラブを塗装したが、
今回のマットブラックは一段と厳つい。
アウトレイジャスに乗せるリールは当然の如く
ミリオネア・ブラックシープ250。
世界に存在するリールを隈なく眺めたこともないくせに、
世界一格好良いと自慢するベイトリールだ。
ヘッドハンターSRV#6及びナイロンライン20ポンドを巻いた
二機を用意し、状況に応じて換装する。
サーキットのコンディションに応じて
エンジンを乗せ換えるようでいいね。
ミスディミーナーSTにはルビアスLT2500-XHに
YGKエックスブレイド アップグレードX8 #1.2を巻き、
リーダーはナイロン25ポンドと10ポンドの二種類を用意して
対象魚に応じて使い分ける。
メインラインで常用しているPE#1.2という太さだけど、
本来は#1でいいと思いつつ、保険を掛けて#1.2にしている。
かといって#1.5ではストレスになるので、
この#1.2という絶妙な太さ強さが大変安心感を与えてくれてよろしい。
PEラインとリーダーの結束はFGノット。
数種類のノットが存在するが、
キャスティングという釣法において導き出した答えのひとつ。
さらにリーダーとスナップの結束はクリンチノット改。
ここをさらに強いダブルクリンチノットにすると、
根掛かり等でFGノットが負けてしまい、
自然の中に余分なゴミを残すことになる。
よって逃げを設けることも必要だと考えた結果である。
スピニングタックルにPEラインを使用するようになってまだ
日は浅く若輩者だが、2005年から数社のPEラインを吟味して
落ち着いたのがYGK製のPEライン。
ウルトラキャストマンにウルトラジグマンを含め、
YGK製が最も自分のスタイルに合致した。
他に東レにサンラインにユニチカも良品であったが、
新興や安かろう悪かろうの首を傾げたくなる
ラインメーカーの存在をここで列挙することはやめておこう。
週末アングラーとは一線を画した、
年間約百日のヘヴィユーザーでもあったので、
PEラインのインプレッションには自信がある。
思い出の魚を喰わせたルアーは数あれど、
あの魚もあの窮地に立たされた時も、
実はYGKのラインが裏切らなかったことによるのだから賞賛に値する。
もし誰かがPEラインに迷っていたならば、
YGKにしなさいとドンと背中を押す。
さらにメイドイン鳴門市というのにも好感が持て、
それは近年だろうか近畿地方の天気予報になぜか徳島県が入るようになり、
なんでやねん、とか、なんで徳島、という声も聞かれるが、
そのおかげで四国徳島が身近に感じられるようになった。
大阪駅前の梅田新歩道橋を歩いている時に、
突然ABCの女性リポーターに「徳島県といえば!?」とマイクを差し出されたら、
怯むことなくウインクひとつ声高にYGKと答えよう。
そしてYGK製造工場を見学できるならば、出来立てほやほやのPEラインに
全身をぐるぐる巻きにされて恍惚の表情を浮かべたいとさえ思っている。
余談になるが初めてのPEラインはうろ覚えだけど、
90年代後半頃だったかの雷強というライギョ釣りに特化したラインだった。
ヘヴィカバー代表のハスエリアで喰わせたカムルチーを、
リールが破壊しロッドが破損しようとも必ず
ランディングできるという安心感があった。
掛けたイトウを確実に手中におさめねばならぬ使命を、
アップグレードX8に課した。
2023年05月08日
イトウは心に宿る24
ようやくルアーを選出したならば、
今度はフックの確認に移行する。
フックポイントが鋭いかどうかを確認するのではなく、
ルアーの指定サイズであるか確認しながら新品に交換するのだ。
使用時間が短くポイントが鋭いのに交換するだなんて、
と惜しんではならない。それほど北海道の水系は重要であり
微塵の後悔もしたくないので問答無用で新品にする。
だけど交換したお古を廃棄するとは言っていない。
使えそうなのは保管して別の機会に使用する。
言い方は乱暴だけど身近な魚なら逃したところで地団太を踏むことはない。
枕を濡らすだけだ。
今回は前述したように釣具の買い足しをしないことにしていたが、
いつぞやの金属類値上がり前に購入したもの等々、
トレブルフックの在庫は見事に充実していたので、
躊躇することなく交換完了。
そのほとんどがカルティバのスティンガーと、
土肥富のマルトフック。
現在はこの二社を主に使用しているが、
当者調べでは、日本を代表する針メーカーはいわゆる播州針と言い、
兵庫県が発祥の地であり、
徳川末期に土佐の国(!)から釣り針製造技術が移入された記録が
ある。
ツーリングやドライブ中に予備知識なしに突如として
オーナーだカツイチだ土肥富だささめ針などの工場が目に飛び込めば
声をだして驚き、有名ではないけれど県道沿いに針メーカーの
工場があれば唸ってしまう。
同行女性からマニアックすぎるとつっこまれるが、
いや、これはエンジンを組む者として、
ヨシムラや戸田レーシングを知らないのはもぐりであるのと同義。
一般人がワイセコのピストンだ連桿比だを知らないのは仕方ないけれど。
実際にあったことだが、登山が趣味ですと言った年上男性が
モンベルを知らないと発言した瞬間、もぐりかとつっこんだことがある。
なぜ登山が趣味などと嘘を言うのか理解できない。
こんな御仁は単独無酸素登頂で天保山を制覇しておけばいい。
楽器演奏が趣味なのにストラディバリウスを
知らないと言った者にも脊髄反射的につっこんでしまった。
ビブラスラップから出直せと言いたい。
カメラが趣味なのにカールツァイスやローデンシュトックを
知らないのももぐりだ。
セリカLB TURBO Gr.5にでかでかとローデンシュトックの
ステッカーが貼ってあるだろうに。
バイクが趣味だけどノートンを知らないとか、
車が趣味だけど光岡自動車を知らないのも厳しいのではないか。
釣人なのに兵庫県に鎮座する土肥富を知らないなどもぐりでしかなく、
金魚すくいから出直せばいい。
閑話休題、もちろん新品ルアー以外はスプリットリングも交換。
そして親の敵を討つようにカエシを潰したり削ったりで、
バーブレスフックにすることも忘れていない。
と、作業を終えてからふと疑問が湧いた。
湿原河川においてトレブルフックは通用するのだろうか。
倒木に流木、沈水植物などで行く手を阻むなら、
シングル・フック仕様も必要ではないだろうか。
め、めんどくさ、いや、決してそんな事を心に思っても
吐き出してはならない。
餌釣り用の針ケースから丸セイゴにチヌ針に白狐、
最大はカルティバSJ43の11/0というジギング・フックを取り出し、
帝人のテクノーラ組糸でスイミング・フックを自作。
腰が重かったのとは裏腹に、作り始めれば楽しい時間となる。
しかしこれで終わらず、スイミング・テストがある。
本来はトレブル・フックでセッティングしてあるプラグなので、
フックの重量や形状の変更によりプラグの動作に
影響を及ぼす可能性がある。
フックサイズを換えた時点で動きが変わるので、
それはもうウチのルアーではないと宣うメーカーもあったが、
そういった主張が面倒臭い。こういったルアーで釣っても
気持ち良くないので次第に出番はなくなり埃が被る。
幸いなことに僕が信頼を置くルアー群に、
その程度で動きが破綻するようなプラグがなかったのはさすがだし、
魚釣りは遊びだから自分なりのチューニングで楽しめばいいという
メーカーのスタイルに共感する。
今度はフックの確認に移行する。
フックポイントが鋭いかどうかを確認するのではなく、
ルアーの指定サイズであるか確認しながら新品に交換するのだ。
使用時間が短くポイントが鋭いのに交換するだなんて、
と惜しんではならない。それほど北海道の水系は重要であり
微塵の後悔もしたくないので問答無用で新品にする。
だけど交換したお古を廃棄するとは言っていない。
使えそうなのは保管して別の機会に使用する。
言い方は乱暴だけど身近な魚なら逃したところで地団太を踏むことはない。
枕を濡らすだけだ。
今回は前述したように釣具の買い足しをしないことにしていたが、
いつぞやの金属類値上がり前に購入したもの等々、
トレブルフックの在庫は見事に充実していたので、
躊躇することなく交換完了。
そのほとんどがカルティバのスティンガーと、
土肥富のマルトフック。
現在はこの二社を主に使用しているが、
当者調べでは、日本を代表する針メーカーはいわゆる播州針と言い、
兵庫県が発祥の地であり、
徳川末期に土佐の国(!)から釣り針製造技術が移入された記録が
ある。
ツーリングやドライブ中に予備知識なしに突如として
オーナーだカツイチだ土肥富だささめ針などの工場が目に飛び込めば
声をだして驚き、有名ではないけれど県道沿いに針メーカーの
工場があれば唸ってしまう。
同行女性からマニアックすぎるとつっこまれるが、
いや、これはエンジンを組む者として、
ヨシムラや戸田レーシングを知らないのはもぐりであるのと同義。
一般人がワイセコのピストンだ連桿比だを知らないのは仕方ないけれど。
実際にあったことだが、登山が趣味ですと言った年上男性が
モンベルを知らないと発言した瞬間、もぐりかとつっこんだことがある。
なぜ登山が趣味などと嘘を言うのか理解できない。
こんな御仁は単独無酸素登頂で天保山を制覇しておけばいい。
楽器演奏が趣味なのにストラディバリウスを
知らないと言った者にも脊髄反射的につっこんでしまった。
ビブラスラップから出直せと言いたい。
カメラが趣味なのにカールツァイスやローデンシュトックを
知らないのももぐりだ。
セリカLB TURBO Gr.5にでかでかとローデンシュトックの
ステッカーが貼ってあるだろうに。
バイクが趣味だけどノートンを知らないとか、
車が趣味だけど光岡自動車を知らないのも厳しいのではないか。
釣人なのに兵庫県に鎮座する土肥富を知らないなどもぐりでしかなく、
金魚すくいから出直せばいい。
閑話休題、もちろん新品ルアー以外はスプリットリングも交換。
そして親の敵を討つようにカエシを潰したり削ったりで、
バーブレスフックにすることも忘れていない。
と、作業を終えてからふと疑問が湧いた。
湿原河川においてトレブルフックは通用するのだろうか。
倒木に流木、沈水植物などで行く手を阻むなら、
シングル・フック仕様も必要ではないだろうか。
め、めんどくさ、いや、決してそんな事を心に思っても
吐き出してはならない。
餌釣り用の針ケースから丸セイゴにチヌ針に白狐、
最大はカルティバSJ43の11/0というジギング・フックを取り出し、
帝人のテクノーラ組糸でスイミング・フックを自作。
腰が重かったのとは裏腹に、作り始めれば楽しい時間となる。
しかしこれで終わらず、スイミング・テストがある。
本来はトレブル・フックでセッティングしてあるプラグなので、
フックの重量や形状の変更によりプラグの動作に
影響を及ぼす可能性がある。
フックサイズを換えた時点で動きが変わるので、
それはもうウチのルアーではないと宣うメーカーもあったが、
そういった主張が面倒臭い。こういったルアーで釣っても
気持ち良くないので次第に出番はなくなり埃が被る。
幸いなことに僕が信頼を置くルアー群に、
その程度で動きが破綻するようなプラグがなかったのはさすがだし、
魚釣りは遊びだから自分なりのチューニングで楽しめばいいという
メーカーのスタイルに共感する。
2023年03月02日
イトウは心に宿る23
当者調べによると、イトウ釣りでもっとも有名なルアーといえば、
釣りキチ三平イトウ釣り編に登場した
野ネズミ型特大ルアーという結果が出た。
御存知の方も多いと思われるが、
このルアーは二次元の世界を飛び出し、
釣りキチ三平ルアーコレクション・イトウの原野ねずみスプーンという
名で販売され、僕の手元にもある。
漫画のレプリカモデルなのに
オリジナルのネーミングではないのがもどかしいのだけど、
これは随分前にWhiplash factory愛好家の釣友から頂いたものだ。
そんな彼は群れることを苦手とし、
群れからの誘いを断ることができる人間だ。
一度竿を交えたとき、タイワンドジョウを掛けて足元まで寄せてきたが、
通行人が近くにいたためラインテンションを抜き、
ロッド操作で上手にフックアウトさせた。
その理由は、ここでタイワンドジョウが釣れることを知られたくなかった
からだった。
一般的な釣人なら躊躇せず釣り上げ、
魚釣りに興味がないであろう一般人に対しても、
魚を高々と持ち上げ鼻高々になることが想像できる。
目先の釣果より将来を考えられる姿勢を評価したい。
あと彼は、僕と同じく
Variable valve Timing and lift Electronic Control system
いわゆる可変バルブタイミング・リフト機構、略してVTECを搭載した
元VTEC乗りであり、カブ主でもあり、本田技研工業株式会社愛が伝わる。
再会することがあるならば、水辺でもなく釣具屋でもなく、
聖地鈴鹿サーキットかもしれない。
魚釣り一筋というのがつまらないので、
ついつい脱線してしまった。
ねずみスプーンをイトウに向かって投げるべく保管してきたが、
それ即ち一度も水に浸けたことがないことを意味する。
まったく使い心地を知らないので一抹の不安を抱えるのだけど、
イトウの習性からして、使いどころさえ間違えなければ
細かい事は抜きに喰ってくれるに違いない。
スプーンの魅力は多くの魚食魚に対して万能であること。
止水に流水、表層から底層なんでもござれ。
よく飛び、動きも最高。
魚釣りを趣味としてでなく、
サバイバルで生き残るための手段として魚釣りをするならば、
間違いなくスプーンを手に取るだろう。
手元が狂って岩にプラグを当てて割れたなら、
失意に暮れて明日の太陽を拝むことができなくなる。
それほど魚を釣ることに関して優秀なルアーだと断言でき、
琵琶湖にスプーンを持って行かないなんて、
買物しようと街まで出かけたが財布を忘れたサザエさんだ。
だがしかし、造形もカラーも単調で、
なにより金属感丸出しのスプーンがどうしても苦手で、
それは思い出に大きく貢献するルアーへの歯形傷が残りにくいことも
あげられる。
ゆえにプラグと比較して、スプーンを所有している数は極端に少ない。
でも、どうしてもスプーンを見切ることができない。
三平くんがスプーンでイトウを釣り、
大助くんもスプーンでイトウを釣った。
思い入れがあるルアーは他に、
娘がカナダへ留学していた時に現地の釣具屋で買ってくれた、
パンサーマーチン・スペリオール・ウィードレスフロッグと、
ストーム・ホッテントットがある。
これらを手にしたものの、感慨深い想いが急速に込み上げ、
万が一のロストで手元になくなるのを恐れたため、
ボックスに入れることができなかった。
これらで初イトウを釣ることができたなら、
とてつもなく大きな喜びになるのだろうけど、
失うことを想像するととてもできなかった。
イトウ釣りのルアーは出揃い、
あとはイトウ以外の魚類に対応した選りすぐりのルアーを、
VS-3010NDMに並べる。
北海道の魅力はイトウだけではない。
近畿でも見られるイトウとは違い、
北海道の水系でしか生きられない本物の天然魚達がいる。
釣りキチ三平イトウ釣り編に登場した
野ネズミ型特大ルアーという結果が出た。
御存知の方も多いと思われるが、
このルアーは二次元の世界を飛び出し、
釣りキチ三平ルアーコレクション・イトウの原野ねずみスプーンという
名で販売され、僕の手元にもある。
漫画のレプリカモデルなのに
オリジナルのネーミングではないのがもどかしいのだけど、
これは随分前にWhiplash factory愛好家の釣友から頂いたものだ。
そんな彼は群れることを苦手とし、
群れからの誘いを断ることができる人間だ。
一度竿を交えたとき、タイワンドジョウを掛けて足元まで寄せてきたが、
通行人が近くにいたためラインテンションを抜き、
ロッド操作で上手にフックアウトさせた。
その理由は、ここでタイワンドジョウが釣れることを知られたくなかった
からだった。
一般的な釣人なら躊躇せず釣り上げ、
魚釣りに興味がないであろう一般人に対しても、
魚を高々と持ち上げ鼻高々になることが想像できる。
目先の釣果より将来を考えられる姿勢を評価したい。
あと彼は、僕と同じく
Variable valve Timing and lift Electronic Control system
いわゆる可変バルブタイミング・リフト機構、略してVTECを搭載した
元VTEC乗りであり、カブ主でもあり、本田技研工業株式会社愛が伝わる。
再会することがあるならば、水辺でもなく釣具屋でもなく、
聖地鈴鹿サーキットかもしれない。
魚釣り一筋というのがつまらないので、
ついつい脱線してしまった。
ねずみスプーンをイトウに向かって投げるべく保管してきたが、
それ即ち一度も水に浸けたことがないことを意味する。
まったく使い心地を知らないので一抹の不安を抱えるのだけど、
イトウの習性からして、使いどころさえ間違えなければ
細かい事は抜きに喰ってくれるに違いない。
スプーンの魅力は多くの魚食魚に対して万能であること。
止水に流水、表層から底層なんでもござれ。
よく飛び、動きも最高。
魚釣りを趣味としてでなく、
サバイバルで生き残るための手段として魚釣りをするならば、
間違いなくスプーンを手に取るだろう。
手元が狂って岩にプラグを当てて割れたなら、
失意に暮れて明日の太陽を拝むことができなくなる。
それほど魚を釣ることに関して優秀なルアーだと断言でき、
琵琶湖にスプーンを持って行かないなんて、
買物しようと街まで出かけたが財布を忘れたサザエさんだ。
だがしかし、造形もカラーも単調で、
なにより金属感丸出しのスプーンがどうしても苦手で、
それは思い出に大きく貢献するルアーへの歯形傷が残りにくいことも
あげられる。
ゆえにプラグと比較して、スプーンを所有している数は極端に少ない。
でも、どうしてもスプーンを見切ることができない。
三平くんがスプーンでイトウを釣り、
大助くんもスプーンでイトウを釣った。
思い入れがあるルアーは他に、
娘がカナダへ留学していた時に現地の釣具屋で買ってくれた、
パンサーマーチン・スペリオール・ウィードレスフロッグと、
ストーム・ホッテントットがある。
これらを手にしたものの、感慨深い想いが急速に込み上げ、
万が一のロストで手元になくなるのを恐れたため、
ボックスに入れることができなかった。
これらで初イトウを釣ることができたなら、
とてつもなく大きな喜びになるのだろうけど、
失うことを想像するととてもできなかった。
イトウ釣りのルアーは出揃い、
あとはイトウ以外の魚類に対応した選りすぐりのルアーを、
VS-3010NDMに並べる。
北海道の魅力はイトウだけではない。
近畿でも見られるイトウとは違い、
北海道の水系でしか生きられない本物の天然魚達がいる。